MerchantBank Consulting
サブページ画像

主に銀行を念頭に置いた、気候変動リスクの定量化[物理的リスク編] 


 『ポートフォリオ・リスクを定量化する枠組み』という視点で気候変動リスクを捉えると、移行リスク[*1]と物理的リスク[*2]ともに、オペレーショナルリスクの計量手法が、参考になる。以下では、主に物理的リスクを念頭において議論を展開している。また少なくともexplicitには、信用リスクを取り扱っていない。
 バーゼル3におけるオペレーショナルリスクの所要資本は、業務収益を主要素として決定される枠組みである[*3]が、オペリスクの計測手法は、頻度推定×影響度推定が基本形である。気候変動リスクの文脈で翻訳すると、例えば、気候変動による水害がどの程度の頻度(確率)で発生するか?を推定することが、頻度推定である。損害額が従う確率分布(の母数)を推定することが、影響度推定である。

【1】 気候変動リスクを定量化する災害を選ぶ  
 マッキンゼー・グローバル・インスティテュートによる、『気候変動リスクとその対応策 物理的リスクと社会経済的影響』(2020年1月)というレポートによると、日本は、気候変動に伴って、高温多湿化する国に分類される。そして、高潮、森林火災、ハリケーンや熱波を含む様々な災害によって、数多くの資産やインフラサービスが被害を受けるリスクが大幅に上昇する可能性が高い。従って、水害(洪水、土砂災害)、高潮、台風によって損害が増加するリスクが高いと考えられる。
 三井住友銀行(SMBC)フィナンシャルグループは、TCFDレポート2020で、ミュンヘン再保険のデータ(自然災害の発生件数)を示しつつ、「気候変動に起因する自然災害の大宗は、洪水、風水害といった水災によって占められているため、リスクイベントを水災に特定しています。」と述べている。過去のみならず、将来においても有効な仮定と考えて良いだろう。
 なお、ミュンヘン再保険のデータによると、洪水と台風の発生件数は同程度であるが、三井住友銀行は、洪水に限定してリスク評価を実施している。また、同グループによれば、気候変動リスクを分析した結果の定量的な開示は、グローバル金融機関として世界初である。
 三菱UFJフィナンシャル・グループも、「日本はじめ、近年特に発生頻度、被害状況とも顕著である水害を対象にしている。」と述べている。
 みずほフィナンシャル・グループは、やや毛色が異なる。台風が、建物に及ぼす損害をモンテカルロシミュレーションで評価することで、気候変動による物理的リスクを計量している。同グループのTCFDレポート2020によれば、台風の強度は増大するが、頻度は減少するとの仮定がシミュレーションで用いられている。
 金融機関以外では、例えば、製造業:セイコーエプソンが、洪水+高潮を対象に、操業が停止することで発生する損害額を算定している。また、小売業:丸井グループは、台風・豪雨等による水害を対象に、営業停止と浸水被害により発生する損害額を算定している。
 まとめると、日本は、気候変動リスクの中でも洪水(外水氾濫)・内水氾濫・土砂災害・台風に由来する、リスクエクスポージャが大きいと考えられる。【2】(4)で述べるように、台風の損害を予測することは、未だ難しい。また、土砂災害の発生予測も、洪水と比較すると困難である。そこで、まずは、洪水(外水氾濫)を定量化することからスタートして、内水氾濫を加え、最後に土砂災害を考慮するというステップが現実的と考えられる。

↑目次に戻る

 

【2】 頻度の推定 
(0)洪水と破堤の整理 
 頻度推定の前に、洪水について整理する。
 洪水は、決壊と氾濫によって生じる。氾濫は外水氾濫と内水氾濫に分けられる。決壊とは、川に設けられている堤防が河川流量の急速な増大により破壊され、河川から水が溢れることを言う。決壊は破堤とも呼ばれるが、堤防決壊と言う用語で統一されるようである。破堤は、河川水位が堤防の高さを越えなくても、発生する。
 河川水位が堤防の高さを越えて発生する破堤が、越水破堤である。他にも、河底から堤防の下側に浸水して堤防が破壊される「浸水破堤」や、川表が侵食されて生じる「侵食破堤」がある。発生件数で言うと、越水破堤が圧倒的に多い(より正確には、越水が破堤の主要因であることが圧倒的に多い)。なお、川の両側で堤防が決壊することは稀であり、通常は片側のみ決壊する。
 外水氾濫は、河川から水が溢れだすことを指す。従って、決壊も外水氾濫に含まれるが、ここでは決壊せずに、越水のみを起こした氾濫を外水氾濫とする。越水氾濫は、河川水位が堤防の高さを超えることで、河川から水が溢れだすことを言う。内水氾濫は、河川水位は堤防の高さを越えていないが、市街地から河川に排水する能力を超えた降雨量により、排水路から水が溢れだすことを言う。

(1)水害(洪水)
 破堤(堤防決壊)確率の推定には、二項ロジット分布が広く用いられている。破堤確率に大きく影響する因子は,①堤防天端幅,②堤体断面積,③堤防裏法高,④堤体土質,⑤河道状況,⑥漏水の有無,⑦ピーク流量/流下能力、という調査研究がある。なお、二項ロジット分布を用いて破堤イベントを発生させるため、年に1回を超える災害発生を想定していない、という従来からの批判は、当てはまらない。
 パラメータ推定の文脈では、①~⑤は、ダミー変数という扱いで良いだろう。つまり説明変数は、⑥と⑦で十分と考えられる。⑥は、直感的にも洪水の継続時間に比例すると考えられる。実際、洪水継続時間が15時間を超えると漏水箇所が比例的に増加する[引用資料1の参照文献21]、ことからも継続時間を説明変数として採用すれば良いであろう。一つの洪水当たりの最大流量であるピーク流量は、総降雨量(正確には、単位時間当たり降雨量の降雨パターンと総降雨量)で推定可能である[Appendix2降雨流出モデルを参照]。
 洪水が発生するくらいだから、降雨量は降雨極値と考えて良いであろう。降雨パターンは、観測所毎に決定される『時間当たりの降雨極値が従う確率分布(ガンベル分布) 』からサンプリングすることで、準備可能である。ただし、時間当たり降雨極値の総和が、同じ観測所における『年最大日降雨極値が従うガンベル分布』からサンプリングした降雨量に等しくなるようにする。こうすることで、非現実的な値をサンプルすることが避けられる。もちろん、ガンベル分布の母数は、予め推定しておく必要がある。
 なお、ロジット回帰で計算される破堤確率は、堤防の1箇所が破堤する確率(スポット確率)である。破堤現象を精緻に捉えるには、堤防全体を複数区間に分けて、(金融分野では、多期間のデフォルト率を推定する場合等に用いられる)ハザードモデルと類似の枠組みを適用する方が、望ましいと考えられる[これは、片側・両側の議論ではない]。
 つまり、複数に分けた区間ごとに破堤箇所を考え、その箇所に至るまでは破堤せず、次の箇所で破堤する累積確率を計算する方が精緻だと考えられる。その場合、複数の箇所が同時に破堤することは考えない。気候変動の影響によって、複数の流域で同時多発的に洪水が発生するリスクが高まるという予測もある。いずれにしても、洪水被害を考慮する領域に対応する堤防に対して、1つの確率(スポット確率)を割り当てるという枠組みは精緻さに欠ける。とは言え、第1ステップとしては十分ではないかと考えられる。
 引用資料2によると、内水氾濫による損害額は水害による損害額の約4割を占める。東京都に至っては、約7割である。内水氾濫に至る降雨強度=しきい値、を予め計算しておけば、内水氾濫が発生する頻度(発生確率)を算定することができるだろう。

(2) 水害(土砂災害)
 土砂災害による被害は増大している。2018 年には観測史上最多の土砂災害が発生し、2019 年の土砂災害も、過去 10年の平均発生数の約 2倍である。土砂災害の増加は、豪雨発生数の増加や、降雨極値の増大に起因していると考えられている。しかし、洪水に比べて土砂災害発生メカニズムの数理モデル化は難しいため、少なくとも気候変動リスクの文脈では、物理的リスクの定量化が遅れていると思われる。  土砂災害における発生確率の推定にも、二項ロジット分布が広く用いられている。説明変数は、動水勾配と起伏量である。
 動水勾配は、水理学上の概念である。ここで扱われている動水勾配は、降雨後に地表面下に浸透した地下水の損失ヘッド(の変化率)である。このため、動水勾配の(回帰)係数は、地質毎に大きく異なることが予想され、実際、大きく異なる。また、動水勾配は、降雨極値に影響を受けるはずなので、降雨極値が従う確率分布の推定が必要となる。

(3)台風
 台風が日本にもたらす被害を考えるのであれば、台風自体の発生頻度を推定しても意味はなく、日本に上陸する頻度を推定する必要がある。すると、台風を確率的に発生させるモデルを構築した上で、上陸頻度を推定するというステップを踏む必要がある。実際には、上陸のみならず接近でも、台風は甚大な損害をもたらす。それ故に、台風による損害の発生を予測することは難しい((4)を参照)。このため、先述の通り、気候変動リスクは、洪水(外水氾濫)・内水氾濫と土砂水害に、当面限定することが現実的と思われる。
 台風を確率的に発生させるモデルは、過去のデータ(発生位置、台風属性値)をベースとして、各要素を確率的に変動させることで、構築される[引用資料3]。台風属性値とは、進行方位、進行速度、中心気圧である。台風には消滅条件(一般的に、中心気圧が1015ヘクトパスカルを超えると、台風ではない)があるので、消滅条件に達するまで、移動を追跡する。
 台風の年間発生数は、ポアソン分布に従うと仮定される。大循環モデル(GCM)に基づく流体力学シミュレーションから求められる変化率を、母数に考慮することで、将来における台風の年間発生数を推定することが可能となる。

(4)台風による損害の発生を予測することが困難な理由
 台風は上陸せずに、接近しただけでも、大きな水災害を発生させる。近くの降雨帯を刺激して大雨を降らせることがあるためである。その意味でも、予測が難しい。因みに、気象庁は次のように定義している。
 上陸:台風の中心が主要4島(北海道・本州・四国・九州)の海岸線に達したこと。
 接近:台風の中心が気象庁の気象官署から半径300km以内の域内に入ること。
 通過:台風の中心が小さい島に達したこと、及び半島を横切ったこと。

 台風がもたらす災害を予測するには、台風に関して2つの予報を実施する必要がある。進路予報と強度予報である。進路予報は、年々精度が向上している[*4,*5]し、予想がズレた理由の解明も進んでいる[*6]。一方で強度予報(≒中心気圧と最大風速の予報)は、精度が若干悪化してる[*5]。なぜか。その理由は、少なくとも2つある[*7]。
 ①強度値は、観測自体がされていない。1987年以降、台風に対する定期的な航空機観測が実施されていない。このため、台風の強度は、衛星写真に写った台風の雲パターンから推定している(ドボラック法)。強度が中程度の台風については、発生件数が多い=データが多いため、精度良く推定できる。一方、強度が強い台風―つまり、予報精度を高めたい台風―は、発生件数が少ないため、精度が低下する。しかも強度が強くなるほど、その傾向も強くなる。[*8]
 日本の気象庁は、強い台風の発生は減少していくと予測しているが、合同台風警報センター(JTWC)[*9]は、増加すると予測している。どちらが正しいだろうか。
 ②台風は、そもそも、その発生メカニズムが十分に理解されていない。特に、A.急速強化というメカニズムと、B.多重壁雲構造に対する理解が不十分であるため、強度予報の精度が向上しないと考えられる。
 A.急速強化(あるいは急速発達:rapid intensification)とは、最大地上風速が1日でおよそ15m/s以上増加することである。急速強化が発生すると予報誤差が大きくなる傾向が観察される[*5]。
 B.多重壁雲構造とは、台風の目が複数存在する構造を指す。台風の目は雲の壁で構成されている。強い台風には、多重壁雲構造が観察され、しかも長時間持続する傾向が見られるが、その理由は解明されていない。

(5)台風による災害予測の精度を向上させるための打ち手
 少なくとも海上における観測データの充実が必要と考えられる。加えて、大気モデルではなく、大気海洋結合モデルでシミュレートする。計算格子=メッシュを細かくすれば、精度が高まることは言うまでもない。富岳の利用が期待される[*10]。
 なお、黒潮の海面水面の変化が、台風強度に影響を与えていることが明らかにされた[*39]。黒潮の海面水面データも必要となるだろう。黒潮の水面温度も(地球温暖化の影響で)上昇しているため、台風強度は増大すると考えられる。黒潮の影響は秋季に見られるようなので、(秋雨前線を刺激して)台風に伴う豪雨の甚大化が心配される。

◆参考:地震
 地震の発生確率(地震活動間隔の確率)を表す候補として考えられる確率分布は、対数正規分布、ガンマ分布、ワイブル分布、ガンベル分布(二重指数分布)である。しかし、地震調査委員会[*11]は、これら馴染みの確率分布と比較衡量を行った結果、BPT (Brownian Passage Time分布)、別名:ブラウンさんの酔歩モデル、を採用している。BPT分布は統計学では、逆ガウス分布あるいはワルド分布と呼ばれている。
 BPT分布は、地震が起きる物理的プロセスを表現するモデルとして提案された。

↑目次に戻る

 

【3】 影響度の推定 
(1)水害(洪水)
 「国土交通省水管理・国土保全局砂防部、砂防事業の費用便益分析マニュアル(案)、令和3年1月」では、洪水による損害額を、①無害価額×②浸水深別被害率、という形式で表している(「国土交通省水管理・国土保全局、治水経済調査マニュアル(案)、令和2年4月」の被害率が更新されている)。
 ①無害価額とは、洪水が発生せず、農地や家屋等に浸水がなかった場合に得られたはずの収入あるいは、資産価値を指している。ただし、無害価額という用語が、治水経済調査マニュアル(案)で使われているわけではない。②浸水被害率は、浸水深に応じて(経験的に)与えられている。
 デンマークの(残念ながら水災ではなく)火災による保険請求額(損失額)の計量分析を行った引用資料4によれば、損失額が従う確率分布の母数は、時間とともに変化すると考えた方が統計的には合理的であると結論付けている。正確には、損失額が一般化パレート分布に従うとした上で、形状パラメータが変化するとした場合のAIC(赤池情報量基準)と変化しないとした場合のAICを比較し、前者のAICが小さいことを示した。この結果を受け入れるならば、被害額は動的に推定した方が精緻であると考えられる。
 引用資料1では、損害額を、(パラメータで加工した)浸水深とベータ分布に従う乱数、を使って表現している。パラメータは建物や動産ごとに異なった値である。浸水深を降雨量から導出している[*12]ので、降雨量から洪水損害額が、一気通貫に算出されている。
 ただし現時点(2021年)では、先述の通り、洪水の浸水域及び浸水深が、ハザードマップによって精度良く表現されているため、ハザードマップを使って、洪水の影響度(損害額)を算定することが行われている。
 他方で、AIを活用して浸水被害の範囲及び深度を推定する(違う表現を使うと、ハザードマップを推定する)取り組みも存在する。
 ①三井住友銀行は、2021年7月27日、衛星画像及び気候関連データをAIで分析し、浸水被害を予測する手法を開発した、と発表した。
 ②株式会社スペクティは、2021年5月17日、水害発生時の浸水範囲をリアルタイムに3Dマップ上に再現することに成功したと発表した。そして7月5日には、7月3日に発生した関東・東海地方の豪雨被害の浸水シミュレーション地図を公開した。
 スペクティの開発した技術では、SNSに投稿された画像や河川カメラ・道路カメラの映像から、浸水範囲と浸水深を、AIが自動推定する。
 ③東北大学災害科学国際研究所は、2020年7月16日、衛星画像から洪水の浸水範囲を推定する機械学習モデル(サポートベクターマシン、SVM)を構築した、と発表した。2018年西日本豪雨水害のデータを、SVMに学習させ、2019年台風19号による水害の浸水域を推定した。その結果、約8割の精度で把握できたとしている。
 ④アリスマ-株式会社は、3次元の地形データと数点の水深データから、未計測地の浸水深を予測するシステムを提供している。三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、2020年7月に起こった播磨川(熊本県人吉市)の氾濫に対して、同システムを使用し、使用可能と判断した。
 ⑤損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、2019年3月25日、米国のスタートアップ企業 One Concern, Inc.お よ び 株 式 会 社 ウェザーニューズと、防災・減災システムの共同開発に関する業務提携を締結したと発表した。ウェザーニューズが気象データを提供し、One Concernが機械学習モデルによって、浸水範囲・浸水深を推定する。浸水は、外水氾濫と内水氾濫をカバーしている。なお、外水氾濫は、降雨による氾濫のみならず、潮位上昇による氾濫を含む。損保ジャパンが持つ保険金支払いデータで、浸水による被害額をキャリブレーションしている。
 ⑥建設コンサルタント会社の日本工営は、深層学習を使って、(降雨による外水氾濫に起因する)浸水範囲・浸水深を予測するモデルを開発している[*37]。訓練データは、氾濫モデルのシミュレーション結果である。破堤地点は、川に沿って数多く設定している(ただし、川の片側のみ)。深層学習モデルは、敵対的生成ネットワーク(GAN)の一種であるpi2pixを用いており、画像データから画像データを生成している。

(2) 水害(土砂災害)
 「国土交通省水管理・国土保全局砂防部、砂防事業の費用便益分析マニュアル(案)、令和3年1月」では、土砂・洪水氾濫による損害額を、①無害価額×②浸水深別被害率、という形式で表している。
 ①無害価額とは、土砂災害が発生せず、農地や家屋等に浸水がなかった場合に得られたはずの収入あるいは、資産価値を指している。②被害率は、土砂堆積の深さと地盤勾配に応じて、(経験的に)与えられている。
 洪水→浸水による損害予測に比べて、土砂災害の損害予測は難しい。また、土砂災害のハザードマップには、浸水エリア(警戒区域)は記されているが、浸水深は記されていない。
 土砂災害も、AIで災害範囲(場所)を推定する取り組みが行われている。
 ①株式会社パスコは、2020年11月、土砂災害の場所を特定する深層学習モデル(畳み込みニューラルネットワーク)を開発した[*38]と発表した。被災地を撮影した1万枚以上の衛星画像を訓練データとして用いた。
 ②応用地質、みずほ情報総研(当時)、インキュビットは、2019年9月、土砂災害の危険性がある地域を抽出するAIモデルを開発したと発表した。土砂災害発生場を予測する手法として従来行 われてきた、いわゆる地形判読を実行する深層学習モデルを開発した。
 ③日本工営は、地形判読用の深層学習モデルも開発している[*37]。モデルは同様に、pi2pix。訓練データは、地形データが「基盤地図情報」(国土地理院)、地すべり地形データが「地すべり地形分布図」(防災科学技術研究所)である。

(3) 台風
 台風被害額を推定する統計モデルとして、以下がある[引用資料3]。
 台風被害額=β0×H×E×V+誤差項。誤差項は、正規分布に従うと仮定する。
 β0は係数であり、統計的に推定されるパラメータである。Hは、台風の強度を表す指標であり、具体的には上陸している間の最低中心気圧H0のべき乗である。つまりH=H0β1であり、β1は統計的に推定されるパラメータである。
 Eは、台風の影響を受ける人数E0のべき乗である。つまりE=E0β2であり、β2は統計的に推定されるパラメータである。なお、E0は台風上陸地域の人口×台風上陸の頻度で計算される。
 また、V=GDPβ3である(GDPは、国内総生産)。β3は統計的に推定されるパラメータである。
 台風被害額を表す式は、次のように解釈できる。
 ①台風被害額は、どの国に上陸するかによって変わる。GDPと相関関係があるが、単純比例するわけではない。
 ②台風被害額は、同じ国でも、どの地域に上陸するかによって変わる。具体的には上陸した地域の"のべ人口"と相関関係があるが、単純比例するわけではない。のべ人口とは、上陸回数を掛け合わせた人口である。
 ③台風被害額は、台風の強さによって変わる。上陸時の最低中心気圧と相関関係があるが、単純比例するわけではない。上陸地の緯度・経度や、上陸した時期によって被害額が変わってくることを考えれば納得できる。
 なお、一般社団法人日本損害保険協会は、同協会のWebサイトで、過去の風水害等による高額支払保険金事例を開示している(執筆時点で最新のデータは2020年3月末現在。URLは以下の通り:https://www.sonpo.or.jp/report/statistics/disaster/ctuevu000000530r-att/c_fusuigai.pdf)。該データによると、ワースト10の内、台風は8件を占める。またワースト1~5は全て台風である。ワースト1である「平成30年台風21号」の保険金支払額は、1兆円678億円である。地震では、東日本大震災の1兆2,862億円がワーストである。

↑目次に戻る

 

【4】 物理的リスク計量化手法の提案 
 世界金融危機の反省から更新された、金融機関に対するリスク規制体系である、バーゼル3には、プロシクリカリティの抑制というアイデアが含まれている。平たく言うと、リスクを開示しないことが投資家の疑心暗鬼を生み、危機が増大する。不完全でもいいから予測して、リスクを定量化して開示しようという考えである。気候変動リスクも、多くの仮定を置いた予測をベースにリスクを定量化するが、それでも開示すべきであるというのが世界的なコンセンサスである。
 とは言え、各企業が独自に実施するには、物理的リスク・移行リスクに関わらず、データやロジック等の理由から困難が伴う。国・公的な研究機関の協力が不可欠であろう。先述の通り、日本で気候変動リスクの対象とすべきリスクイベントは、洪水(外水氾濫)・内水氾濫であると考えられる。従って、(2)及び(3)の対象は、洪水(外水氾濫)と内水氾濫である。
 英国に倣い日本でも、気候予測データセット(及びデータ利用ガイダンス)の整備が検討されている[*13]が、もう少し踏み込んでも良いのではないかと考えている。銀行が、気候変動リスクを定量化・開示する場合、国・公的な研究機関と、(3)のように役割分担することを想定できるだろう。

(1) 地球温暖化を考慮しないシナリオ下でのシミュレーションに、2℃シナリオ/4℃シナリオが、変更をもたらすポイント
 まず、発生頻度について。
 気候変動(地球温暖化)が、降雨量に与える影響は、①最大値を増大させるという態様ではなく―つまり、これまで経験したことがないような激しい雨が降るということではなく-、②今までよりも、大雨の頻度を増加させるという態様と考えられる。比喩的には、100年に一度の大雨が10年に1度になったり、10年に1度の大雨が毎年になったりする。もう少し現実的には、季節場合によっては月に、複数回大雨が降るようになるのであろう[*14]。
 ①については、約100年に渡る過去データの最大値を統計的に処理した結果から、最大値(降雨極値)において気候変動の影響は、信頼区間95%で統計的に有意ではないという結果がある[*15]。
 降雨強度が過去データの範囲内でありながら、大雨の頻度が増加するということは、降雨継続時間が延びることを意味するだろう。つまり温暖化の影響は、定性的には、激しい雨を長時間降らせると表現できるだろう。一般的な感覚では、かつては、激しい雨が長時間続くことは考えにくかった(ために雨宿りの意味があった)が、今後は普通にあると覚悟すべきということである。
 次に、影響度(損害額)について。
 引用資料5によれば、洪水ハーザドマップは浸水域・浸水深の予測について、十分に機能している。なお、温暖化の影響によって複数の流域にまたがった同時多発的な洪水リスクが高まるとの指摘がある(例えば、引用資料6)。地球温暖化の影響は高緯度ほど大きく、日本では北海道で影響が大きいと考えられる。引用資料6は北海道を対象としていることを考えると、全ての地域で、同様の傾向が認められるかは検討の余地があるだろう。

(2) 具体的なアクションと役割1 スキームの概略 
 設計思想は、以下の通り:銀行は従来のリスク管理計量化の枠組みに、気候変動リスクを組み込んで統合的なリスク管理を行う。他リスクの管理と平仄を合わせるため、『最悪ケースで、どれだけ損害が出るかを算定する』。SMBC他メガバンクのような長期間(~2050年まで)に渡る、積算値を計算するわけではない(ただし、移行リスクは単年度で計測・開示している)。
 やや煩雑に思えるかも知れないが、融資先企業が自身の気候変動リスクを評価する際に銀行がサポートすることや、ストレステストを射程に捉えると、以下のようなプロセスが望ましいと考えた。なお、国・公的研究機関は、銀行の負担が大きくなり過ぎないように、取り組みをサポートすることが望まれる。
 スキームを簡単にまとめると、次のようになる。
 降雨極値データ(日最大及び時間最大)取得→極値データをガンベル分布で表現(母数の推定)→ガンベル分布から日最大及び時間最大降雨データをサンプリング→①内水氾濫と②外水氾濫
 ①内水氾濫と②外水氾濫で分岐するので、それぞれを以下に説明する。
① 内水氾濫 
 時間最大降雨量が内水氾濫のしきい値を越えれば、内水氾濫の損害額を計算→損害額の分布を作成→99%期待ショートフォール(ES)で評価(※)
※ 既存のハザードマップを使って損害額を計算しているので、ダブルカウントを避けるため、外水氾濫が発生した降雨データでは、内水氾濫の発生はキャンセルする。
② 外水氾濫
 サンプリングデータから降雨パターンを作成→降雨流出モデル(貯留関数法)でピーク流量を算出→ピーク流量を説明変数とする二項ロジット分布で破堤確率qを算出→q>0.5の場合二項分布で洪水イベントを発生→ハザードマップを使って損害額を計算→損害額の分布を作成→99%ESで評価

(3) 具体的なアクションと役割2 スキームの詳細 
 このスキームでは、洪水ピーク流量の確率分布を求める一般的な手法である「総合確率法」において問題とされる、降雨継続時間の固定を避けている。降雨継続時間の固定を避けて、総合確率法を改良する試みとして、『一雨流域平均総降雨量が、降雨継続時間によって異なる確率分布に従う。』と仮定するアプローチがある[*16]。
 このスキームでは、年最大日雨量を、確率分布からサンプリングすることを想定しているが、このテーマに関して2つの論点があるだろう。一つは、確率降雨量を使うか使わないかという論点。もう一つは、損害額を評価する手法との平仄という論点である。
 金融機関のリスク管理に親和性が高い「期待ショートフォール」あるいはVaRを使うのであれば、100年に1回といった確率降雨量を使う必然性は低い。ただ確率降雨量の使用がコンセンサスを醸成しているのであれば、それを使うことはやぶさかではないし、対応は容易である。
 損害額の評価に洪水ハザードマップを使用している以上、降雨量を選択するに当たり、ハザードマップの前提と平仄を合わせることは合理的であろう。地域によって、ハザードマップ作成に当たり、前提とした降雨量は異なる。確率降雨量を使っている場合でも、100年に1回の自治体もあれば、200年に1回の自治体もある。確率降雨量を使わず、過去の最大降雨量を使っている自治体もある。使い分けるというのが、最も正確さを担保できるだろうが、決めの問題とも言える。

① 河川ごとに、どの観測所の降雨データを使用するかを、国・公的な研究機関が決める。なお、過去の降雨データに加えて、イベント・アトリビューションから得られる『2℃シナリオ(RCP2.6シナリオ)、4℃シナリオ(RCP8.5シナリオ)』に対応したデータを加えることで、気候変動を考慮したデータセットが構築できる。このデータセットも国・公的な研究機関が準備する。
② 河川に紐づいた降雨極値(単位時間当たり最大降雨量及び年最大日降雨量)が従う、ガンベル分布(若しくは一般化極値分布)の母数(母数が、パラメータの線形和である場合を含む)を各々、河川ごとに推定する。各行が実施する。融資先企業の事務所や工場がある場所のみを、河川の洪水発生地域(破堤ポイント)とすれば十分であろう。
③ 年最大日降雨量が従う確率分布から、日雨量をサンプリングする。各行が実施する。年最大日降雨量は、地球温暖化の影響を反映したデータが得られると期待する。
④ 単位時間当たり最大降雨量が従う確率分布からサンプリングする。ただし、単位時間当たり最大降雨量の総和が③と等しくなるように、サンプリングする。こうすることで、降雨パターンが作成可能となる。ピーク流量は一般に、流域平均2日雨量に対して算出されるので、③でも、それを踏襲する。各行が実施する。単位時間当たり最大降雨量は、過去データで良い。
⑤ 降雨パターンを基に、降雨流出モデルの一つである「貯留関数法」を使って、ピーク流量を計算する。各行が実施する。ただし、貯留関数法を実行するに当たり必要となる定数については、国・公的な研究機関が準備して、開示することが望ましい(詳細は、Appendix2 降雨流出モデルを参照)。
⑥ ピーク流量を入力すると、破堤確率を推定するモデルを国・公的な研究機関が構築する。
⑦ 外水氾濫を規定する雨量が流域平均2日雨量であるように、内水氾濫規定雨量は2日最大降雨強度(1時間雨量)とする。2日最大降雨強度は、④のサンプリングを使用する。内水氾濫を起こす「しきい値」を、地域ごとに設定しておき、内水氾濫規定雨量がしきい値を越えたら、内水氾濫が発生したとする。しきい値は、国・公的な研究機関が構築する。ダブルカウントを避けるため、当該サンプリングの雨量極値が、外水氾濫にまで至れば、内水氾濫は損害をゼロとする。
⑧ 損害額は、ハザードマップを活用する(内水氾濫については、別途用意することが望ましい[*17])。具体的にはハザードマップから、融資先企業の事務所や工場がある場所における、「浸水深」を取得する。 「国土交通省水管理・国土保全局砂防部、砂防事業の費用便益分析マニュアル(案)、令和3年1月」(「国土交通省水管理・国土保全局、治水経済調査マニュアル(案)、令和2年4月」の被害率が更新されている)には、資産の種類に応じた「浸水深別被害率」が掲載されている。この被害率を資産額に掛けることで、損害額が算出される。各行で実施する。
⑨ ⑥の破堤確率が0.5を越えれた場合、二項分布に代入し、洪水イベント(正確には、破堤による外水氾濫)を確率的に発生させる。以下は、各行が行う。
⑩ 破堤は通常片側のみに発生することを鑑み、洪水の発生毎に、破堤ポイントを左岸・右岸のどちらかに確率的に割り当てる。損害額としては、劣加法性がある期待ショートフォール(ES)を採用する。
⑪ ⑩の損害額分だけ、融資先企業の担保価値が減じると考えて、LGDを修正する。
⑫ PDは、行内の格付け推移モデルに照らし、必要に応じて格付けを遷移させて対応する。
⑬ ⑪と⑫から、気候変動リスク(ただし、洪水と内水氾濫のみ。)を勘案した損害額(ES)が算出できる。

(4) 補足
 日本中の河川の外水氾濫予測システム「Today's Earth - Japan」(TE-Japan)を開発・運用してきた、JAXA地球観測研究センターと東京大学生産研は、TE-Japanが90%を超える精度で堤防決壊地点を捕捉していたことを明らかにした(2021年6月18日)。なお、30時間以上前に、予測可能であった。[*18]
 これは、①モデル標高・土地利用等の「水文地形情報」及び、②「河川水文情報」が十分で、③計算能力も十分であれば、外水氾濫地点の高精度予測が、可能であることを示している。別の見方をすると、(3)で示した枠組みが機能するデータセットは、既に存在すると考えられる。今後、内水氾濫と、(特に)土砂災害の予測精度を上げる努力(モデルのブラッシュアップとデータセットの整備・充実)が必要である。

↑目次に戻る

 

★ Appendix1 科学的な整理  
(1)発生頻度と影響度が従う確率分布について
 一般的に、頻度の推定は、『ポアソン分布』や『二項分布』といった確率分布によって、頻度が表現されると仮定して行われる。損害額が従う確率分布は、ガンマ分布やワイブル(Weibull)分布と仮定されることが多い。ファットテイルを強く意識する必要があれば、一般化パレート(Pareto)分布が選択される。損害保険の分野では、一般化パレート分布が広く使われている。
 気候変動リスクの定量化において、頻度の推定は肝であり、地域はもちろんのこと、時期の区分が重要である。
 頻度が従う確率分布自体は、広く知れた確率分布が適用可能である。例えば、二項分布を適用した場合、発生確率は適当な統計モデルで推定する必要がある。発生確率には、推定対象とするリスク・イベントにおける年度毎の特性が反映される。なお発生確率は、二項分布の文脈においては、成功確率と呼ばれる。
 洪水の浸水域及び浸水深は、ハザードマップによって精度良く表現されているようである。このため、TCFDが定める物理的リスクにおいて、洪水の影響度(損害額)を評価・開示する場合、統計モデルによる推定ではなくハザードマップが使用されている。ハザードマップは100年に1回もしくは200年に1回という確率降水量をもとに作成されることが推奨されている。

◆参考:stanについて
 MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ・シミュレーション)の実行が容易な統計解析ソフトウェアstanには、ガンマ分布やワイブル分布さらにガンベル(Gumbel)分布などは、標準装備されているが、一般化パレート分布や一般化極値分布などは実装されていない。ただし、確率密度関数を陽に書き下せる場合、stanは確率分布を自作して、その確率分布からサンプリングしてMCMCを実行することが可能である。
 さらに、自作した確率分布から乱数を発生させる関数も作成することができるため、事後確率分布の検証も可能である。つまり、目的変数が、一般化パレート分布や一般化極値分布に従う場合でも、統計モデルのパラメータ推定が可能である。

(2)極値分布及び降雨極値の予測について 
 洪水を引き起こすような―いわゆるゲリラ豪雨などと呼ばれる―極端な降雨を、確率的に表現する場合は、極値分布と呼ばれる確率分布が用いられる。
 確率分布からサンプリングした標本N個の最大値を、適当な係数で変換した変数、が従う確率分布を極値分布という。適当な係数は、吸引係数と呼ばれる。Nが十分大きな場合、極値分布は元の確率分布とは異なる確率分布となる。元の確率分布が、正規分布やガンマ分布の様に指数関数型である場合、極値分布はガンベル分布になる。グンベル分布とも表記される。
 降雨強度が弱い場合は、降雨量が従う確率分布は、対数正規分布が良い近似である。一方、降雨強度が強い場合は、ガンマ分布は良い近似である。従って、降雨極値の頻度推定に用いられる確率分布(極値分布)には、ガンベル分布が用いられる。降雨強度とは、雨によって形成された地表上の水面が、1時間の間に上昇する速度である。つまり、降雨強度が強ければ、水たまりの水面が素早く上がってくる。なお、極値は最大値との認識でも十分である。
 極値分布は次にあげる3つのタイプに限定されることが数学的に証明されている。①ガンベル分布、②フレシェ分布、③ワイブル分布。なお、3つの分布は、一般化極値分布として、単一の分布関数で表現することができる。一般化極値分布で統一的に表現する場合、ガンベル分布はタイプ1、フレシェ分布はタイプ2、ワイブル分布はタイプ3と表記される。
 降雨極値の予測で言うと、熊本の年間最大日雨量が「一般化極値分布」に従うとした上で、パラメータを推定した例がある[引用資料7]。ヒストリカルデータである年間最大日雨量データの観測期間は、1901年から2005年迄である。同資料では、パラメータは次のように設定されている:形状係数ξは定数(推定値は、0.112)。位置係数μは、時間とパラメータの線形和。尺度係数σは、その対数が時間とパラメータの線形和。
 また引用資料8では、一般化極値分布の形状係数を定数として固定して年間最大日雨量を推定する枠組みは、(1)大半の観測所で実用上許容でき、(2)データが不十分な観測所でも全域代表値(0.1)で代用することが可能、と述べている(ただし、引用資料7と8とで一般化極値分布の形状係数の符号が反対であるため、引用資料7に符号を合わせた)。これは、つまり年間最大雨量がガンベル分布に従うという近似は、妥当と考えられる。
 なお、気候変動(地球温暖化)の影響で、例えば、降雨極値が従う確率分布が変化することを定量的に示せば、気候変動を勘案できる。それを可能にする手法として、イベント・アトリビューション(EA)と呼ばれる手法がある。EAは、気候変動(地球温暖化)の影響を、豪雨(→洪水)や台風といった低頻度の気象イベントに取り込んで、気候変動の影響を抽出する。

(3)アンサンブル・シミュレーション(AS) 
 イベント・アトリビューションを説明する前に、アンサンブル・シミュレーション(AS)を説明する。気象イベントにおける支配方程式系の非線形性が強いため、初期値の変動(ゆらぎ)が小さくても、シミュレーション結果は大きく変化する。そこで、結果に大きく影響する初期値のゆらぎを選択し、それらの初期値・集合を用いて、シミュレーションを行う。その結果・集合を平均(アンサンブル平均)した結果を、最終結果として採用するシミュレーション手法がASである。
 ASの結果は、初期値を一つ決めてシミュレーションした結果よりも予測精度が高い。このことは、理論的に示されている。

◆参考:データ同化
 ASは、シミュレーションの精度を上げるために初期値を工夫する、取り組みであるという整理が可能である。同じ取り組みに、データ同化がある。データ同化では、シミュレーション結果と実観測データとの差異が最小になるような初期値を推定する。最もシンプルな推定法は最小二乗法であるが、実務では、最適内挿法、3次元変分法・4次元変分法、アンサンブル・カルマンフィルターなどが用いられる。
 また正確に言うと、データ同化は初期値のみならず、境界値やパラメータの推定にも用いられる。

(4)イベント・アトリビューション(EA) 
 EAを定義的に述べると、『人間活動が、ある年に起きた特定の異常な気象イベントの発生確率を、どの程度変化させたかを評価する手法』となる。
 具体的には、EAは、「気候変動の影響なしのシミュレーション結果」と、「影響ありのシミュレーション結果」とを"比較"することで、気候変動の影響を抽出する。最初に、①コンピュータ上に気候変動の影響を受けていない仮想世界Aと、気候変動の影響を受けた仮想世界Bとを構築する。次に、②仮想世界AとBとで、低頻度の気象イベントを大量に生成する(アンサンブル・シミュレーションを行う)。最後に、③仮想世界AとBとで、低頻度の気象イベントが発生する確率を比較することで、低頻度の気象イベントに対する気候変動の影響を抽出する。
 EAは、「猛暑・寒波」のような長時間スケール・イベントには適合性が高い反面、「台風や豪雨」のような短時間スケール・イベントには適合性が低い。さらに日本では急峻な地形の影響を受けるため、局所的な豪雨を対象としたEAは、以下の二つの理由から、困難であることが従前から指摘されていた[*19]。
    i)局所的な豪雨の発生には、スケールの小さな地形や降水現象など、気候モデルでは再現が難しい要素が重要。
    ii)地球温暖化に伴う大気中の水蒸気量の増加が、降水量の増加につながる過程において、偶然性が大きい。
 気象研究所、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所及び海洋研究開発機構は、『アンサンブル気候予測データベース(d4PDF/d2PDF)の結果』に、『日本周辺の大気に計算領域を絞ったアンサンブル・シミュレーション』を併用したEAを行うことで、指摘されていた困難をクリアした[*19]。
 具体的には、平成29年7月九州北部豪雨及び平成30年7月豪雨を対象に、当該シミュレーションを実施し、"激甚"豪雨に相当する日降水量の頻度が、地球温暖化の影響で、1.5倍並びに3.3倍になったことを示した。つまり、従来は難しいと見做されていた、日本における集中豪雨・ゲリラ豪雨に対して、気候変動の影響を勘案することが可能になったと考えられる。

◆参考:アンサンブル気候予測データベース(d4PDF/d2PDF)
(1) SOMPOリスクマネジメントは、アンサンブル気候予測データベース(d4PDF/d2PDF)を用いて、気候変動(地球温暖化)の影響を台風や豪雨に取り込んだ、商業的リスク評価サービスを提供している。
 d4PDFは、文科省が主導し、気象研究所・東大大気海洋研・京大防災研・国立環境研・海洋研究開発機構・筑波大が開発した、『地球温暖化施策決定に資する気候再現・予測実験データベース』で、4℃シナリオをシミュレーションした結果である。d2PDF は、2℃シナリオをシミュレーションした結果である。
 d4PDF/d2PDFでは、将来気候に関して、海面水温の将来変化パターン6種類について、それぞれ15個の摂動を与えている。詳細に言えば、60年分の月平均海面水温データに、海面水温解析の推定誤差と同等の摂動を与え、海面水温の摂動に整合するように調節して(初期値の摂動)を選択している。

(2) 筑波大学と気象研究所(「極端豪雨はなぜ毎年のように発生するのか」の著者でもある川瀬宏明主任研究官)は、日本の豪雨災害における「大気の川」の役割に注目した。d4PDF を通して、地球温暖化の進行が与える影響を評価した結果、気温が4℃上昇した場合(いわゆるRCP8.5シナリオ)において、豪雨の発生頻度が、春季に約3.1倍、夏季に約2.4倍に増えるという結果が得られた[*40]。

↑目次に戻る

 

★ Appendix2 降雨流出モデル [*20]
 降雨量から、河川に流出する流出量(正確には、直接流出量)を、推定する数理モデルが、降雨流出モデルである。ここでは、貯留関数法と合理式について述べる。タンクモデルやキネマティック・ウェーブ法(キネマティック・モデル)は割愛する。なお、合理式並びに、貯留関数法及びタンクモデルにおける支配方程式は、それぞれの仮定をおくことで、キネマティック・ウェーブ法における支配方程式から、導出することができる[*21]。

(0) 降雨から河川流出までのプロセス
 降雨から、河川流出に至るまでの過程は複雑である。
 降雨の一部は、蒸発する。蒸発しなかった降雨の一部は浸透し、それ以外は表面流となる。浸透した降雨は、地下水流と早い中間流及び遅い中間流の3つに分かれる。地下水流と遅い中間流は、地中流となる。表面流と早い中間流は、表層流となる。最終的に、表層流と地中流の一部が直接流出となり、直接流出に寄与した以外の地中流が基底流出となる。直接流出は短時間で流出する。基底流出は、長い時間をかけて流出する。

(1) 合理式
 降雨量から流出量の最大流量=ピーク流量Qを算出する、降雨流出モデルの中で最もシンプルでポピュラーな、合理式と呼ばれるモデルは、以下の通りである。ただし、合理式は、流域面積が、およそ100km2以下の河川に有効とされている。二級河川でも、多くは流域面積が100km2を越えるので、合理式でピーク流量を算出した場合は、誤差が大きいと考えられる。
 河川のピーク流量を算出する計算式は
     Q=流出係数f/3.6×平均降雨強度r×流域面積A
     Q[m3/s]
     r[mm/h]
     A[km2]
     f:流域の状況によって数値が異なる。急な山地=0.75~0.90
                       起伏のある山地・山林=0.50~0.75
                       平らな耕地=0.45~0.60
                       山地河川=0.75~0.85
                       平地小河川=0.45~0.75
 降雨パターンがあれば、平均降雨強度は計算できる。主要河川の流域面積は、国土交通省のサイトからデータの取得が可能である[*22]。

(2) 貯留関数法
 貯留関数法は、『降雨は流域内に貯留し、その貯留高に応じて、河川へ流出する』と考えるモデルである。このモデルは、一級河川での適応が多く、特に山地の多い流域で適合度が良い傾向にあることが知られている。より具体的には、流域面積が数ヘクタール~1,000km2程度までの河川に有効とされている。なお、貯留関数法における降雨量は全て、時間当たりの降雨量である。つまり、正確には降雨強度である(タンクモデルも同様)。
 貯留関数法は、(線形の)タンクモデルと異なり、貯留量と流出量との関係が非線形である。また降雨量は、有効降雨量でなければならない。有効降雨量は、降雨量に流入係数を掛けて求める。流出量と降雨量の観測データから算出される流入係数は、河川毎に、国・公的研究機関が準備することが望ましい。
 貯留関数法では、1階の非線形常微分方程式を解いて、流出量を求める。貯留量を求めた後に、貯留量を変換して、流出量を算出する等、いくつもの手法が存在する。常微分方程式が非線形であるため、数値計算で解を求める(ポピュラーな、ルンゲ・クッタ法あるいは、ルンゲ・クッタ・ギル法で良い)。
 貯留関数法には、パラメータが3つ含まれる:流域特性を表す流域係数K、P並びに、遅れ時間TLである。流れの抵抗則をマニング則としたとき、Kは、(流路の地目に応じて決まる)マニングの粗度係数、斜面長さ、斜面勾配及びPを与えれば、決定される。マニング則を採用した場合のPは、0.6である。
 一方、流れの抵抗則を、飽和・不飽和浸透流としたときKは、表層土層厚、飽和透水係数、有効空隙率、透水性の減少の程度を表す無次元パラメータ、飽和透水係数、斜面長さ、斜面勾配及びPを与えれば、決定される。本ケースでは、Pは、1/9~1/3程度である。
 遅れ時間を計算する式は、角屋・福島の式を始め、いくつも提案されている。
 貯留関数法では、遅れ時間を考慮した直接流出量が(ルンゲ・クッタ法で)計算される。実際には、流出に遅れが観察されるからである。この量(mm/h)を、ピーク流量m3/s)に単位換算するため、直接流出量に流域面積(km2)をかけ、3.6で割る。こうして得られた流出量で最大の数値が、ピーク流量に該当する。

↑目次に戻る

 

★ Appendix3 リスク管理のフレームワーク  
(1) モンテカルロシミュレーションによるVaRとESの導出
 モンテカルロシミュレーションでオペレーショナルリスクを計測する場合は、一定期間の損失額累計額を繰り返し計算し、その損失額の分布集合からリスク計量化指標を導出する。
 リスク計量化指標としてデファクトスタンダードであったVaRは、リーマンショックにおいて、テイルリスクを捕捉できなかったとして批判を浴びた。バーゼル3におけるFRTB(トレーディング勘定の抜本的見直し)につらなる最終規則では、適格トレーディングデスクの価格変動リスクにおける「モデル化可能なリスクファクターに対する所要自己資本額」の算出は、期待ショートフォール(ES)を用いることとされた。
 気候変動リスクによる損失額が従う確率分布は"裾が厚い"ので、FRTBと平仄を合わせるならば、ESを用いることが妥当であろう。
 VaRの推定値は、簡単である。その損失額の分布集合を金額の順番に並べて、99%ileのVaRなら、全体の個数N×0.99番目の損失額とすれば良い。
 ES(信頼区間99%)の推定値は、VaRを含む損失額から金額の大きな方向に向かって、損失金額を全て足し合わせ、個数で割った値とすれば良い。
 なお、ESはバックテストが困難であると認識されている。一方VaRのバックテストはシンプルである。VaR計測後、事後的にVaRを超過する損失が発生した回数を調べることで事足りる。つまり、統計的検定の観点から、VaR超過損失の発生が、信頼水準から想定される回数を大幅に上回っていなければ、VaR計測モデルには問題ないと判断される。例えば、信頼水準99%の場合、信頼水準から想定される回数は、100回に1回である。

(2) Climate VaR
 リスク管理の文脈でCVaRと言えば、Conditional VaRであり、これはESである。しかし、気候変動リスクのリスク管理指標という文脈でCVaRと言えば、Climate VaRであり、ややこしいことにCVaRと表記される。もっとも単位が%なので、Conditional VaR (=ES)とは区別可能である。
 CVaRは劣加法性があり、金融機関(銀行)以外の事業会社が開示するリスク指標としては、有用と思われる。
 CVaRはMSCI(が買収したスイス企業カーボンデルタ社)が開発した分析手法で、移行リスク(ただし、政策リスクのみを考慮)、物理的リスクのみならず、機会を含めて、定量化するところに特徴がある。CVaRは、企業価値への影響という形で評価される。具体的には、リスクと機会を金額に換算し、その現在価値の総額が企業価値に占める割合を示したものが、CVaRである。CVaRがマイナスなら、企業価値が減じる。日本では、GPIFが、ポートフォリオに適用し、「GPIFポートフォリオの気候変動リスク・機会分析 2019年度 ESG活動報告別冊」で開示している。国土交通省の資料[*23]によれば、中国の不動産ファンドLink Real EstateもCVaR を開示している。
 具体的には、次のように計算する[*24]。
①移行リスク(政策リスク)
 要求される温暖化ガス排出削減量×炭素価格、でコストを計算する。採用するシナリオによって、当該コストは変化する。
②物理的リスク
 洪水等によって被る損害額がコストである。どのような災害を考慮するか、及び採用するシナリオによって、当該コストは変化する。
③機会
 低炭素技術機会は、低炭素技術特許の取得状況と、現在の低炭素技術推計収益を基にして、算出する。この算出手法は、スイス連邦知的財産庁(日本語では、スイス知的財産連邦機関と訳されることもある)が MSCI 気候リサーチセンターと開発した特許スコアがベースとなっている。特許の価値は、特許前方引用・特許後方引用・市場カバレッジ・共同特許分類(共通特許分類)グループの数を考慮してスコアリングされている。
④割引現在価値
 キャッシュフローはWACCで現在価値に割り引かれる。WACCは、次のように変化させる。初年度は、当該企業自身のWACCである。2080年度には、対象企業が属する産業セクター全体のWACCに収斂する。

↑目次に戻る

 

★ Appendix4 気候変動リスクの評価と開示に関する全体像、及び物理的リスクの位置づけ 
 TCFDでは、気候変動リスクを4つの基礎項目に分けて、開示することを提言している。4つの基礎項目とは、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標、の4つである。基本的に、①将来への対応を重視しており、シナリオ分析を活用すること、②気候変動が財務に与えるインパクトを把握すること、を提言している。
 ガバナンスでは、『リスクと機会に対する取締役会の監督体制』と『リスクと機会を評価・管理する上での経営者の役割』を開示する。戦略では、『短期・中期・長期のリスクと機会』、『事業・戦略・財務に及ぼす影響』及び『様々な気候シナリオを考慮した組織戦略の強靭性』を開示する。リスク管理では、『リスク識別・評価のプロセス』、『リスク管理のプロセス』と『組織全体のリスク管理への統合状況』を開示する。指標と目標では、『組織が戦略・リスク管理に即して用いる指標』、『温室効果ガス排出量』及び『リスクと機会の管理上の目標と実績』を開示する。
 上記で触れられているリスクとは気候関連リスク(気候変動リスク)に他ならないが、TCFDでは同リスクを、移行リスクと物理的リスクに分別している。
 移行リスクとは、低炭素経済への「移行」に関するリスクである。TCFDでは、4つに細分している:政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク、評判リスク。政策・法規制リスクでは、温室効果ガス排出に関する規制の強化や、情報開示の拡大等が、例示されている。技術リスクでは、既存製品の低炭素技術への入れ替え(代表的には、ガソリン車から電気自動車への移行)、新規技術への投資失敗等が、例示されている。市場リスクでは、消費者行動の変化(いわゆるエシカル消費)、市場シグナルの不透明化、原材料コストの上昇などが例示されている。評判リスクでは、消費者選好の変化(例えば、カーボンオフセット商品を選ぶ)、業種への非難、ステークホルダーからの懸念の増加(例えば、機関投資家から示される、石炭発電所への融資に対する懸念)などが例示されている。
 物理的リスクは、急性リスクと慢性リスクに細分される。急性リスクは、台風や集中豪雨のような気象現象が激甚化するリスクを指している。慢性リスクは、平均気温の上昇(イメージとしては、温帯地域が熱帯化して、従来栽培していた作物を生育できない)や海面の上昇といったリスクを指している。
 移行リスクが企業財務に与える代表的なインパクトには、炭素税や排出量取引などのカーボンプライシングがある。物理的リスクが企業財務に与える代表的なインパクトには、災害による(事務所や工場など)不動産への損害がある。サプライチェーン分断による被害も、物理的リスクに該当する。

↑目次に戻る

 

★ Appendix5 物理的リスク計量化の実例解説 

(1)三井住友フィナンシャルグループにおける物理的リスクの分析プロセス[*25] 
 発生頻度推定×影響度推定という枠組みではない。発生頻度を確率分布からサンプリングして与えるのではなく、シナリオに対応した発生確率をデータ(定められた値)として与えている。影響度についても、統計モデルから推定するのではなく、データ(定められた値)として与えている。

①気候変動リスクの物理的リスクにおけるリスクイベントを、洪水に限定。
②シナリオは、RCP2.6(2℃シナリオ)とRCP8.5(4℃シナリオ)を使用。各シナリオにおける2050年度までの洪水発生確率[*26]を使用。
③洪水によって銀行が被る損害額(貸倒引当金の増加)を、PD(デフォルト率)の増加とデフォルト時損失額の増加で考慮する。
④洪水によって、与信先の事業がダメージを受け、財務に負の影響を与える。その結果、与信格付けが低下して、PDが増加する。
⑤洪水によって、与信先の担保物件の価値が毀損する。これは、銀行の回収額を減少させるため、デフォルト時損失額が増加する。
⑥与信先の担保物件が被る損害額は、国土交通省が開示しているハザードマップを利用している。ハザードマップ上に所在する担保及び事業法人を対象として、ハザードマップが示す浸水深に対応した損害額を考慮。
⑦洪水によって銀行が被る損害額を、洪水の発生確率×損害額で算出する。

(2)マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)による物理的リスクの計量評価
 MGIによる「アジアにおける気候変動リスクと対応策」(2020年11月)[*27]は、アジアにおける気候変動による物理的リスクを計量評価している。日本については、東京における"洪水"損害を定量化している。
 特徴的な点を以下に列挙する。
a. 現時点で100年に1回とされる事象が、地球温暖化の影響により、どれだけ加速されるかを試算している。
b. 集中豪雨による内水氾濫、と外水氾濫(河川氾濫)及び高潮による(内水及び外水)氾濫の3種を評価対象としている。ただし、これら3つの事象の同時発生は考慮していない[*28]。また土砂災害は考慮していない。
c. 考慮している河川は、東京都内の区部河川9流域及び多摩部河川14流域の中小河川である。
 主な主張は、以下の通り。「100年に1回の大雨を想定し、何ら対応策・緩和策を講じない前提」で、「2050年にもたらされる影響を、現在と比べる」と、①浸水深が1.7倍、②不動産の損害が2.2倍、インフラの損害は2.4倍、③集中豪雨は4.8倍、河川氾濫(外水氾濫)は1.5倍、高潮による氾濫は3倍。
 地球温暖化の影響を考慮した将来の予測データは、RCP8.5シナリオ下で地球気候モデル(GCM)を用いたシミュレーションにより発生させている。予測データが従う確率分布は、一般化極値分布(GEV)と仮定している。GEV分布の母数推定には、母数の推定は、地域頻度分析[*29]を実施した上で、L-モーメント法を用いている。

(2-1) 集中豪雨による内水氾濫
 降雨の一部は、蒸発し、蒸発しなかった降雨の一部が浸透する。その部分は、PCRaster Global Water Balance(PCR-GLOBWB) Ver.2を使っているようである。浸透流解析には、MODFLOWが使われていているようである。降雨データとしては、1時間当たり最大降雨量(降雨強度)が従うGEV分布から、100年に1回の大雨[*30]に該当するデータをサンプリングして、降雨強度50mm/hの「しきい値」を超える場合は、内水氾濫が起きるとしているようである。内水氾濫が起きたあとの浸水深の算定は、LISFLOOD-FP洪水モデル Ver.5.9を使っていると思われる。LISFLOOD-FPは、英ブリストル大学とEU共同研究センターが1999年に共同開発した「降雨流出・洪水氾濫モデル(に基づく浸水解析プログラム)」である[*31]。
 なお、過去データから推計した100年に1度の年最大日降雨量が、GEV分布において、何年に1度の事象に該当するかを調べている。その結果、RCP8.5シナリオ下では、現時点で100年に1度と考えられる事象(あくまで集中豪雨であって、集中豪雨による内水氾濫ではない)が、2050年には28年に1度の事象になってしまうことが示されている。
 過去データから推計した100年に1度の年最大日降雨量は、降雨強度を24時間まで引き延ばすことで計算している。降雨強度は、クリーブランド型の降雨強度式:降雨強度=定数1/(降雨継続時間^定数2+定数3)を使って算出している[*32]。なお、過去データとは、東京管区気象台(大手町)が昭和2年~平成22年のデータで、八王子観測所が昭和51年~平成22年である。
 2050年の集中豪雨発生頻度は、現在の4.8倍になるという主張に至るロジック及びプロセスは、妥当だと思われる。

(2-2)  集中豪雨による外水氾濫
 RCP8.5シナリオにおける将来のGEV分布から年最大日降雨量をサンプリングし、その降雨量から浸水深まで、パッケージソフトを複数(PCR-GLOBWB→MODFLOW→LISFLOOD-FP)を使って、一気通貫に求めている。いわゆる「降雨流出氾濫解析モデル」である。類型的に言えば、分布型物理モデルである。
 降雨流出氾濫解析モデルの標準的な入力セットは、降雨量、標高データ、土地利用、河道断面である。降雨量は既に書いた。標高データは、国土地理院の5mと10mのデータを組み合わせ、解像度25mのデータを構築している。土地利用は、JAXAの高解像土地被覆データを活用しているが、マニングの粗度係数は米国農務省のデータを使っている。河道断面は、(入手できないため)使用していない。
 ちなみに、分布型物理モデルに対して「概念モデル」では、複数の計算ステップを踏む必要がある:①降雨流出モデル、②破堤確率を統計的に推計する、③越流公式で越流量を求める、④越流量から浸水深を求める。①降雨流出モデルでは、合理式や貯留関数法、タンクモデル等が用いられる。③越流公式は、堰の形状に応じた公式が存在する。
 外水氾濫(洪水)の発生確率については、『将来の河川氾濫に関する数値は、降水量と同様に極値解析により推計しているが、ここでは ISI-MIP(Inter-sectoral Impact Model Intercomparing Project、イージーミップ)の流量データを使用している。 』としか書かれていない。次のように算出していると思われる。
 ISI-MIPはドイツ連邦教育・研究省が出資し、同じく独ポツダム気候影響研究所が幹事になり、2012年2月に始まった国際プログラムである[*33]。地球全体を対象として、地球温暖化が及ぼす影響評価を、5つの分野に対して分野横断型で実施している[*34]。5分野の一つ、水循環には洪水リスクの発生頻度が、どの程度変化するかも含まれている。洪水リスクの発生頻度は、「年超過確率1/X(再現期間X年)にまで、ピーク流量が増えること」で表しており、ピーク流量としては、5日間の平均流量が用いられている。
 従って、GEV分布から5日分の日雨量をサンプリングし、河川流量を算出して、その平均値を求める。河川流量が従う確率分布の累積分布関数に当該平均値を代入した値が99パーセンタイルに該当するまでデータのサンプリングを続ける。当該データの発生頻度が洪水リスクの発生頻度に他ならない。
 この分析から、過去(1971年~2000年)において100年に1回の頻度で発生していた洪水は、2035年~2064年では71年に1回の割合で発生する可能性があることが示されている。
 結局、5日間の平均河川流量が、100年に1回の集中豪雨で生じる河川流量を超えていると洪水が発生すると考えている。このアイデアの妥当性は自明ではないので、2つの傍証をあげている。①外水氾濫の発生確率は、集中豪雨の発生確率ほど大きくはならない、②RCP8.5よりマイルドな結果をもたらすRCP6.0に類似したシナリオを使用した結果では、外水氾濫の発生確率が2015~2039年には1.3倍、2075~2099年には約1.1倍に上昇する。この傍証と併せて、外水氾濫が2050年に1.5倍になることは、妥当であろうとMGIは主張している。

(2-3) 高潮による氾濫
 現在及び2050年の高潮は、文献等のデータを使用している。MGI が特に何をしたというわけではない。

(2-4) 損害額の計算
 損害額算出の枠組みをイメージ的に言えば、次のようになると思われる。MGI が内水氾濫、外水氾濫、高潮による氾濫のそれぞれについて、ハザードマップを作成し、当該マップに基づいて、損害額を算出した。
 加えてAqueduct Floods Methodology[*35] の枠組みを採用している。当該枠組みでは、FLOPROSを使って洪水防御レベルを考慮している。洪水防御レベルとは、洪水防御施設で防御し得る最大規模の洪水レベルである。例えば、10年洪水防御レベルでは、10年に1回以下の洪水による資産の損害を防ぐものとする。つまり、洪水防御レベルで回避された損害は考慮しない。
 なお、FLOPROSは現状唯一存在する全球洪水防護レベルデータベースであり、文献調査とモデルの推定によって地域スケールの洪水防護レベルを洪水の再現期間として表現したものである。

↑目次に戻る

 

★ Appendix6 シナリオ及びシナリオ分析 

 別ページに飛びます。
 ■ シナリオ及びシナリオ分析の目次 ■
【1】 用語等の整理とシナリオの全体整理
【2】 RCPシナリオとSSPシナリオ
【3】 NGFSシナリオ
【4】 移行リスクにおけるシナリオ
【5】 UNEP FIの移行シナリオ(移行リスクの評価)
【6】 UNEP FIの物理的シナリオ(物理的リスクの評価)

↑目次に戻る

 

★ Appendix7 各企業の物理的リスクのシナリオ分析 
 出典は、各社のWebサイト[*36]。
(1) 三菱商事
 原料炭事業、銅事業及びサーモン養殖事業に関して、物理的リスクを評価している。
 ①原料炭事業@豪州
 風水害リスクを想定している。具体的には、暴風による港湾施設の破損、サイクロンが引き起こす高波による港湾施設の破損及び操業中断、石炭採掘現場において洪水が引き起こす操業中断をリスクとして認識している。
 ②銅事業@南米
 渇水リスクを想定している。具体的には、河川や地下水から十分な取水ができないことが引き起こす、操業中断をリスクとして認識している。
 ③サーモン養殖事業@欧州、南米、北米
 海水温の上昇及び海面の上昇をリスクと想定している。具体的には、病害・赤潮等の増加が引き起こす、斃死率並びに生産コストの上昇をリスクとして認識している。

(2) キリンホールディングス
 物理的リスクとして、原料調達リスクと操業リスクを認識している。シナリオ分析では、AR6において主流になると見込まれる、マトリクス・アプローチも活用している。
① 原料調達リスク
 大麦・ホップ・紅茶葉・ワイン用ぶどう果汁について、コストインパクトを試算。シナリオ分析は、シナリオ1(2℃シナリオ、SSP1、持続可能な発展)とシナリオ3(4℃シナリオ)の比較で実施。その結果は、シナリオ1に比べてシナリオ3では、コストインパクトが、約7倍であった。
② 操業リスク 
 洪水リスクと水ストレス(水需給が逼迫している状態)によるリスクを、操業リスクと認識している。
 洪水リスクとしては、物流への影響を認識。シナリオ分析は、シナリオ3で実施。シナリオ3における洪水被害は、東日本大震災と同等と仮定している。水ストレスよるリスクは、「豪州で工場が最盛期に操業停止になる」という形で現れると認識。

↑目次に戻る

 

[注釈]
*1 G20の要請を受け、金融安定理事会により設立されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、気候変動に伴うリスクを移行リスクと物理的リスクに大別している。(広義には、)気候変動政策および規制の変化によってもたらされるリスクを移行リスクと呼ぶ。
 狭義には、低炭素経済へと移行する過程で、影響を受ける有形資産の価値が将来的に下落するリスクを呼ぶ。また、TCFDは移行リスクを次の4つに細分している。①政策・法規制リスク、②技術リスク、③市場リスク、④評判リスク。
*2 気候変動に起因する災害等によって、有形資産が物理的な影響を受けるリスクを、物理的リスクと呼ぶ。資源枯渇やサプライチェーンの分断が与える損害も物理的リスクに含まれる。また、TCFDは物理的リスクを、2つに細分している。①急性リスク、②慢性リスク。
*3 ビジネス指標コンポーネントBIC×内部損失乗数ILM=オペレーショナルリスクに対する所要資本額。
 BICは、ビジネス指標BIに掛け目をかけた後、(累積的に)足し合わせることで算出される。BIとは、銀行勘定・トレーディング勘定といったビジネス要素毎の3年分の平均利益の合計である。
 ILMは、BICとLCを変数として含む数式で計算される。LCは、過去10年間に起こったオペレーショナルリスク損失の平均値を15倍した値である。ILMは、利益と損失を比較衡量し、利益に比べて損失が大きければ所要資本を増やすという役割を持っている。もちろん、逆も然りである。
*4 気象庁 予報が難しい現象について (台風による暴風と大雨、高潮)|台風の進路・強度予報の誤差について(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yohokaisetu/taihu.html)
*5 伊藤耕介、「台風物理学の基礎とその応用としての予測」Part 4 台風予測の現状、GFDセミナー資料、2017年(http://www.itonwp.skr.u-ryukyu.ac.jp/download/seminar/201708Ito/part4.pdf)
*6 京都大学防災研究所は、アンサンブル感度解析と呼ばれる手法を用いて、令和元年東日本台風(台風19号)の進路が上陸3日前に、予報から大きくズレた理由を解明した(https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2021-04-20)。台風近くにあった熱帯攪乱が、予測よりも速く発達したことによって、台風の進路が西側にズレた。アンサンブル感度解析も、イベントアトリビューション(EA)のように、アンサンブル・シミュレーションのメンバーを比較する。ただし、EAは人間活動が与える影響を抽出するのに対し、アンサンブル感度解析は、どの領域の気象事象が最も影響を与えたか?を抽出する手法。なお、アンサンブル・シミュレーションでは、シミュレーション結果をメンバーと呼ぶ。
*7 引用資料5
*8 台風の強さに関する情報を雲の衛星画像から抽出する手法(ドボラック法)に、深層学習を活用して、予測精度を上げたことが発表された(2021年6月25日)。深層学習の深さは16層で、衛星画像を「魚眼レンズ」風に加工したことが奏功した。出所:https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/24178/ 
*9 JTWC=米国海軍と米国陸軍が、ハワイ州真珠湾海軍基地に合同で設置した、米国防総省の機関。あくまでJTWCは軍事作戦の一環として、台風警報を発令するため、非公開となることもある。
*10 引用資料9。なお富岳は線状降水帯の半日先予測にも成功している(https://cesd.aori.u-tokyo.ac.jp/fugaku/img/report_duc.pdf)。これが線状降水帯の発生予測を2021年6月から開始するという気象庁の発表(2021年4月19日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE1556K0V10C21A4000000/)に繋がったと思われる。
*11 地震調査研究推進本部の下に設置された委員会。地震調査研究推進本部は、阪神・淡路大震災を契機として、地震に関する調査研究を一元的に推進するために、総理府に設置された政府の特別機関(その後、文科省に移管)。
*12 水が広がるスケール(つまり水平方向スケール)に比べて、水が溜まるスケール(つまり垂直方向スケール)が小さいとき、浅水流方程式は氾濫・洪水及び津波を、精度良く記述できることが知られている。浅水流方程式は、3次元ナビエ・ストークス方程式の2次元近似式である。浅水流方程式は、解析的には解けないので、数値的に解く必要がある。
 引用資料1では、降雨によるダイレクトな浸水に加えて、一旦河川に流入した雨が河川から氾濫して起こる浸水も考慮している。このため、河川流量を記述する方程式を(数値的に)解く必要もある。これは、「マニングの粗度係数、流積、河川流量、河川水深、水路床勾配、径深」といった河川ごとのデータが必要であることを意味する。
 従って、流体の数値シミュレーションに慣れていたとしても、作業負荷は大きい。
*13 国土交通省気象庁・第2回気候変動に関する懇談会、|資料3|議題3 我が国の気候予測データセットの整備及びその解説書の作成について、2019年2月26日(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/kikohendo_kondankai/part2/part2_gidai3.pdf)を参照した。
*14 引用資料10によれば、①日本国内の大雨及び短時間強雨の発生頻度は有意に増加し、雨の降る日数は有意に減少している。②日本国内の年降水量には、統計的に有意な長期変化傾向は見られない。③今後も雨の降り方が極端になる傾向が続くと予測される。
*15 引用資料11(http://www.radio3.ee.uec.ac.jp/ronbun/URSI-F_632_Karasawa.pdf)
*16 引用資料12(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejhe/71/2/71_63/_pdf/-char/ja)
*17 2021年6月10日付け日経新聞朝刊38面(社会面)の記事によれば、内水氾濫の危険性があるとされる1071市区町村のうち、内水氾濫ハザードマップを作成済の市区町村は、409である。
*18 出所:https://www.jaxa.jp/press/2021/06/20210618-1_j.html
*19 国立研究開発法人国立環境研究所、地球温暖化が近年の日本の豪雨に与えた影響を評価しました、令和2年10月20日 https://www.nies.go.jp/whatsnew/20201020/20201020.html
 なお、当該イベント・アトリビューションで雨量を再現した"平成29年7月九州北部豪雨"は、引用資料5(303ページ)で、『予報できなかったし、総雨量を再現できなかった』豪雨として紹介されている。また同資料(306ページ)によると、『予報も再現も出来ない豪雨の例は、たくさんある。』少なくとも、その一つを再現したのだから、気候変動を勘案した豪雨の再現精度は、相当高まったと思われる。
*20 主に、引用資料13を参考にした。
*21 出所:引用資料14 
*22 https://www.mlit.go.jp/statistics/details/river_list.html
*23 TCFD対応ガイダンス参考資料|海外企業のTCFD開示事例、URLは以下の通り:https://www.mlit.go.jp/common/001396717.pdf
*24 主に、GPIFポートフォリオの気候変動リスク・機会分析 2019年度 ESG活動報告別冊を参考にした。URL:https://www.gpif.go.jp/investment/GPIF_ESGReport_FY2019_EX_J.pdf
*25 SMBCグループ 2020TCFDレポート |SMBCグループにおける気候変動への取り組み  |2020年8月(https://www.smfg.co.jp/sustainability/materiality/environment/climate/pdf/tcfd_report_j.pdf)、を基にまとめた。
*26 MS&ADインターリスク総研が東京大学、芝浦工業大学と協働で実施している気候変動による洪水リスクの評価プロジェクトが提供するデータ。
*27 出所:https://www.mckinsey.com/jp/~/media/McKinsey/Locations/Asia/Japan/Our%20Insights/Climate-risk-and-responses-in-Asia-Full-report-J.pdf
*28 内水氾濫と外水氾濫を同時確率(Freundの2変数指数分布)で扱った論文として、例えば以下がある。国土交通省国土技術政策総合研究所資料、第1080号、2019年7月。第2章 内水・外水による統合的浸水ハザド評価手法の開発(http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1080pdf/ks108007.pdf)
*29 地域頻度分析とは、標本データが少ない場合に、データの頻度が従う確率分布が似た地域を同質な地域とみなし、データ数を増やして推定精度を改善する方法である。
*30 「●●年に1回の大雨」等と確率的に表現される降雨を、確率降水量と呼ぶ。確率降水量については、気象庁のWebサイトhttps://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/riskmap/cal_qt.htmlにある説明が分かり易い。
*31 出所:http://www.bristol.ac.uk/geography/research/hydrology/models/lisflood/
*32 マッキンゼー・グローバル・インスティテュートは、以下の資料から引用している。中小河川における今後の整備のあり方検討委員会、東京都内の中小河川における今後の整備のあり方について 最終報告書(平成24年11月)、p.36。URLは、https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000005864.pdf
*33 出所:http://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201211/264001.html
*34 出所:https://www.cger.nies.go.jp/ja/news/2014/140206.htmlである。
*35 出所:https://files.wri.org/d8/s3fs-public/aqueduct-floods-methodology.pdf
*36 三菱商事 https://mitsubishicorp.disclosure.site/ja/themes/113
   キリンHD https://www.kirinholdings.co.jp/csv/env/tcfd.html
*37 一言・古木・荒木・櫻庭、水災害・土砂災害におけるAI技術の活用の取り組み、こうえいフォーラム第28号/2020.5、pp.39-48 (https://www.n-koei.co.jp/rd/thesis/pdf/202003/forum28_005.pdf)
*38 小林・下村・吉川・武田・島崎・柴山・森田・洲浜、緊急対応を想定したAIによる土砂災害分析の適用性、日本リモートセンシング学会誌、Vol.40 No.3 (2020)、pp.153-157 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/rssj/40/3/40_153/_pdf)
*39 https://www.kyushu-u.ac.jp/f/46063/21_11_24_02.pdf 
*40 https://research-er.jp/articles/view/106846

|引用資料1|長野・津守・稲村・佐野・小林・佐山・寶、損害保険のための日本全域洪水リスク評価モデルの開発(2):リスク評価モデルの構築と適用例、自然災害科学、37-2、191-203(2018)
|引用資料2| 第1回気候変動を踏まえた都市浸水対策に関する検討会(国土交通省)資料3、近年の降雨及び内水被害の状況、下水道整備の現状について、令和元年12月18日
|引用資料3|楠原・今田・井芹・森・鼎、確率台風モデルを用いた近未来台風リスク評価、土木学会論文集B1(水工学)Vol.68,No.4,I_445-I_450,2012
|引用資料4|西埜晴久、一般化パレート分布を用いた損害額の分布の計量分析、損害保険研究80巻、3号、pp.101-112、2018
|引用資料5|坪木和久、激甚気象はなぜ起こる、新潮社、2020
|引用資料6|国土交通省・第3回気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会|資料4|山田明人、北海道大学大学院工学研究院、d4PDF、d2PDF(5km)解析の現状、2019年2月28日 |引用資料7|高橋 倫也(神戸大学・海事科学部)、極値統計学、平成20.年8月
|引用資料8|大堀・飯田・久保、一般化極値分布関数の形状母数値の推定と固定化による実用的効果に関する研究-年最大日雨量の確率水文量推定精度向上に向けて-、農業農村工学会論文集、No.295、pp.1~9(2015.2)
|引用資料9|佐藤・川畑・宮川・八代・三好、【新春企画特集】 「富岳」による新時代の大アンサンブル気象・大気環境予測、繊維学会誌第77巻、第2号(2021)、p-54~p-58(https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber/77/2/77_P-54/_article/-char/ja)
|引用資料10|気象庁、日本の気候変動2020 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書、2020年12月 (https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/2020/pdf/cc2020_honpen.pdf)
|引用資料11|唐沢好男、極値統計データにみる日本の降雨特性~地球温暖化の影響、有りや無しや~、2019年3月7日
|引用資料12|田中・立川・椎葉・萬、降雨継続時間に応じた総降雨量の条件付き分布関数による総合確率法の改良、土木学会論文集B1(水工学),Vol.71,No.2,63-71,2015 |引用資料13|愛媛大学水工学研究室講義資料、河川工学(第3回)、http://www.cee.ehime-u.ac.jp/~hydro/lecture/rivereng/river_eng_3.pdf
|引用資料14|呉修一・山田正、既往概念流出モデルの理論的導出、水文・水資源学会Vol.22、No.5、 Sep.2009、 pp.386-400

 引用資料1の参照文献21:宇野尚雄・杉井俊夫:河川堤防の被災対策と安全性評価-被災確率モデルの効用-,土と基礎,38(9),129-135,1990.


お問い合わせ
  

TOP