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転生悪役令嬢は、呟きを一部移したのですわ

〖量子技術界隈〗
(1) 経済史家クリス・ミラー氏の発言「そこに西側が先にたどり着くことが決定的に大事になる」(25年11月17日付け日経朝刊7面)は、含蓄が深い。量子技術に通暁しているわけではないだろうが、流石に、本質を捉える能力が高い。日本の某著名経営者は、どこかで「日本の量子コンピューターは優れている・進んでいる」的な発言をしていたが、ミラー氏発言の含意を正しく理解できている日本人は、どれ位いるだろうか(とアジってみた)。なお『そこ』とは『量子優位性を達成した実用的な量子アプリケーションの開発』と同義である。そして、その開発が極めて難しいことは、11月14日にグーグルがarXivにて公開したポジションペーパーThe Grand Challenge of Quantum Applicationsでも示されている。言わずもがな、グーグルが10月22日にnatureで公開したOTOC(非時間順序相関関数)シミュレーションも、量子優位性を達成した実用的な量子アプリケーションではない(ことはグーグル自身も認めている)。

(2) 量子技術が経済に与えるインパクトを信じていない人も沢山いる。著名人では、マーク・ザッカーバーグ(メタ)が代表であろう。日本で、「AIにオールイン」と言っている経営者は良いとして、それを囃している取り巻きは、それが量子技術を無視していることを理解しているのだろうか。

(3) 経済インパクトいう意味では、半導体自体が凄いのではなく、ムーア則に従って指数関数的に微細化が進んだ半導体がもたらす圧倒的な計算パワーが、凄い。圧倒的な計算パワーによって、将来予測の精度が上がり🐾1、マルチモーダル・ビッグデータを経由して複雑な事象に通底するインサイトを得ることが可能となった。2020年代はGPUでCPUをブーストすることで何とかカバーしているものの、従来則による計算パワーの増加に天井が意識されてきたため、量子技術が注目されるに至った。つまり、計算パワーを引き続き指数関数的に増加させたいという願いが、量子コンピューティングを希求する。このため、研究者からはお叱りを受けるだろうが、需用側は、量子コンピューター=「新しいムーア則に従う半導体で作る計算機」くらいに捉えた方が、大局を見誤らない。言葉を替えれば、AI時代にAI用の半導体が必要なように、量子時代には量子用の”半導体”が必要という理解で良い(科学的には全くの曲解であるが、概念的にはそれで良い)。AI半導体で劣後すれば、経済力・防衛力・その他諸々国力で劣後するという認識は、広く共有されるに至った。量子"半導体"も、そのアナロジーで考えれば良いだろう。
🐾1 将来予測の欲求は、古来から変わらない。昔は、易経や占星術で、将来を予測した気になっていた。

(4) シンギュラリティ予想で有名となったレイ・カーツワイルは、生粋の計算パワー信者である。計算パワーが引き続き指数的に増加すれば、将来のある時点で「人は死ななくなる」とまで宣っている。それは、寿命を伸ばす技術が生物的劣化(老化)速度を上回る時点が、いずれ訪れるという論理的帰結(あるいは神託)である。米国では、その神託を信じる人が、相当数いるようである。

(5) 論文「Rational Quantum Mechanics:Testing quantum theory with quantum computers」🐾2,🐾3,🐾4は、物理量子ビット数が1,000程度で、量子優位性は消え去ると予言する🐾5,🐾6
🐾2 Rational Quantum Mechanics(RQM)=量子力学の有理数的機構。これは、正しい訳語ではない(そもそも訳語が存在しない?)。ただし、Rationalは有理数(rational number)の意味である。複素ヒルベルト空間ではなく、有理数制約を課した複素ヒルベルト空間で量子力学を定義・展開する。
🐾3 RQMでは、物理系から得られる情報(の量や質)に制限を課すことで、量子則を数学的に導き出す、というアプローチを採用する。
🐾4 PNAS版(オープンアクセスではない)は、https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.2523350123。arXiv版は、https://arxiv.org/pdf/2510.02877。PNAS=米国科学アカデミー紀要で、査読付きの総合科学学術誌。
🐾5 量子優位性が、「量子ビット全体を巻き込んだ量子もつれ」に由来すると考えよう。一方で、そんな『超大規模絡まった集団』から情報を抽出するには制限があるはず、と言うのがRQMの基本スタンス(と理解)。つまり、RQMは情報抽出限界があると主張する(と理解)。量子ビット数が増えるに従って、古典計算に対する優位性が漸近的に現れると期待されているが、それは情報抽出限界で、行き止まりになる、とする(と理解)。それが1,000程度であろうという予言。なお、物理量子ビット数1,000程度では、RSA2048暗号は(現実的な時間で)解けないと考えられている。
🐾6 他方で、加のスタートアップOTI Lumionicsが、「化学における量子優位性は、200物理量子ビットを超える領域にある」と主張@arXiv(https://arxiv.org/pdf/2603.08883、26年3月9日)している。下限が上振れし、上限が設定されて、とても窮屈な状況に追い込まれてしまった。

(6) 量子CAEの目線で言うと、O(1)が期待できる「量子回路に実装した格子ボルツマン法(量子格子ボルツマン法:量子LBM)」が本命であろう(☛こちらを参照)。O(1)は、計算コストが問題のサイズに依存しないという、藍染惣右介とユーハバッハを足し合わせたようなチート能力である。古典計算が立ち入れないような問題サイズあるいは、超高解像度での解析が可能になるかもしれない🐾7。量子LBMで、非線形性の取り扱いは、O(1)文脈の手前で既に難しい。マルチフィジクスは、O(1)とは、全く相容れない。線形かつO(1)が実現可能なユースケースを見つける競争が始まっているかもしれない。
🐾7 このため、トルメキアの"知将"クロトワがそうだったように、「久しく錆びついていた野心が疼く」のかもしれない。もっとも、それは、「短けぇ~夢」だった(ちなみに映画公開当時(1984年)、このシーンへの劇場での反応は、(女子たちによる)大爆笑であった)。

(7) 量子機械学習(QML)と古典機械学習(CML)の比較では、QMLはバランスが取れているから優秀という評価を下されることがある。バランスが取れているとは、複数のCMLと単独のQMLを比較するというセットアップにおいて、QMLがCML達に負けてはいない、という意味である。比較される評価指標は例えば、「正解率(内挿領域での性能)、汎化性能、外挿領域での性能」である。負けてはいない、というのは微妙な表現である。評価指標毎に見ると、QMLより優れたCMLは存在するが、全ての評価項目でQMLに勝つCMLは存在しないということを言い表している。しかし、これは、ある意味当たり前である。機械学習には古くから、「ノーフリーランチ定理」が知られている。全ての評価指標において優れる、唯一無二の機械学習モデルは、存在しないという定理である。従って、複数のQMLと単独のCMLを比較しても、同じことが言えるだろう。
 何が言いたいかというと、QML対CMLの議論で、バランスの良さでQMLを推すというのは、筋が悪い。おそらく、QML対CMLで、唯一QMLに軍配が上がる性質は、少量データあるいはスキニーデータ🐾8でも正解率が高い、ということだけだろう🐾9。とは言え、然は然り乍ら、実務の現場感覚で言うと、「バランスの良さは有用だ」という意見はあるだろう。ごもっとも。しかし、それも『圏論×機械学習』で、変わる可能性がある。『圏論×機械学習』は、ドメイン知識と職人技でCMLのアーキテクチャを設計するのではなく、タスクに応じて数学的にアーキテクチャを設計できる可能性をもたらし得る。下記Kan Extension Transformersは対象がトランスフォーマー(だけ)であるが、全ての機械学習の概念は圏論的な解釈が可能らしいから、全ての機械学習に"拡張"できる可能性は十分あるだろう。つまり、タスクに応じて数学的にアーキテクチャを設計できる可能性があるだろう。つまり、バランスの良さでQMLを推すというのは、筋が悪いと思われる。
🐾8 データ・サンプル数に比べて、特徴量が多いデータのこと。医療系で顕著。具体的には、患者数自体は少ないが、患者1人あたりの検査データは膨大、というケースが当てはまる。医療の場合、患者一人に対して、ゲノムデータ(⋍DNA)、トランスクリプトーム・データ(⋍RNA)等のオミクス・データが膨大に存在する。
🐾9 ただし、少量データ(医療系の場合は、特にスキニーデータ)でも正解率が高い、という特性が最も活きるメディカル分野でも、反乱が起きている。東北大学が、「少ない脳画像(MRI)データから、再現性の高い予測を可能にした」と主張する論文を発表した(26年5月25日@scientific reports,https://www.nature.com/articles/s41598-026-52800-4_reference.pdf)。大規模公開データの主成分をそのまま利用して、小規模データのスコアを計算することで、予測性能が上がったことを示した。QMLにとっては、逆風ではあるだろう。

〖AI〗
(1) 「AI(LLM)は、一度のズルで、一気にワルになる」ことを米アンソロピックが発見した。知性がない(とされ、心もないとされる)AIにこのような現象が発生することは、大変興味深い。人間社会において、性悪説ではなく性弱説をベースに、各種社会制度を設計することは理に適っているのかもしれない。

(2) 何度目かのAI冬の時代であった80~90年代も2020年代も、目指すAIの姿は不変である:AI=人と同じ知性や常識を実装した計算機械である。人と同じ(人に近づける)という意味では、機械に"常識"を教え込むことは、本質的に重要なステップである。フィジカルAIを想定した場合、常識は必須であろう。ここでいう常識とは、楽曲「おどるポンポコリン」で「♪そんなの常識~」と歌われている歌詞にある常識の意味である。つまり、(社会)人にとっては既知の共通認識と言う意味である。数学世界の言葉では、公理(公理系)ということになるだろう。当時(80~90年代)、機械に常識を習得させるには、少なくとも数百万個🐾1に及びルールを学習させることが必要であろうと推測されていた。しかし、常識を習得するために必要にして十分なルールの全容を誰も知らない。合理的な帰結として、機械に常識を習得させるのは無理だ=人と同じ知性や常識を実装した機械の開発は無理だ、と成り、多くの研究者は開発を諦めた。
 という訳で、暫くの間、AI開発は行き詰っていた。そんな閉塞感真っ只中の2012年、AlexNetが衝撃のデビューを飾った。ルール・ベースではない、大量データさえあればオッケーな深層学習モデルが、特定タスクに衝撃的な性能を叩き出したのであった。そのインパクトは、人と同じ知性や常識を実装した機械の開発も、大量のデータさえあれば可能になるのではないかと期待させるのに十分であった。スケーリング則のくだりもあり、期待は高まったものの結局、深層学習モデルも「人と同じ知性や常識を実装した機械」の開発には、貢献できなかった(という結論で良いだろう)。つまり残念ながら、「ルール・ベースはヲワタ。データが全て」というわけには、いかなかった。ルール・ベースの学習なしでは、常識は習得できない、と考えられている。
 そういう認識の下、ニューロ・シンボリックAI(ニューラル・シンボリックAIとも言う)が注目されるに至った。ニューロ・シンボリックAIとは、字面から自明であるが、ルール・ベースの学習=シンボリックAIと、データ・ベースの学習=人工ニューラルネットワークによるAIとの、ハイブリッドAIである。ニューロ・シンボリックAIの開発を機能させるポイントは、必要にして十分なルールの生成である。難しいチャレンジとなるが、生成に用いる手法として、例えば、生成強化学習が考えられるだろう。最新版の生成AIモデルは、ユーザーの意図を汲み取る精度が向上していると評判であるが、開発の裏側では、そのようなパラダイム・シフトが起きている、と推測している。
 もっとも、ヤン・ルカンは、ニューロ・シンボリックAIでは不十分である、と考えているようである。
🐾1 どうやって、数百万個と推測したかは、寡聞にして知らない。

(3) 階層的推論モデル(Hierarchical Reasoning Model:HRM)に着想を得た、極少再帰モデル(Tiny Recursive Model:TRM)。HRMは、シンガポールのAI企業が開発。TRM(コードはギットハブで公開)を提示した論文の著者は、加サムスンAIラボの研究者(単著)。TRMのパラメータ数は700万(極少!)。TRMは当面役に立たないが、次のブレークスルーに繋がる可能性がある。

(4) 物理は、全て有効理論である。つまり物理学という学問体系は、特定条件下でのみ成立する理論の集合体である(条件の厳しさに濃淡はあるし、研究が進む結果、緩和される)。それは数学も同様である(数学の場合、一見すると似通った"条件"であるにもかかわらず、証明が絶望的に難しくなることが珍しくない)。公理及び定義と言う名の特定条件をまず設定し、その中で命題を厳密に証明することで、数学は構成される。平たく言うと、文脈を無視すると、成立しない。言い方を変えると、知は高度であれば高度であるほど、文脈を無視することはできない。文脈を無視した知は無価値と言っても良いだろう。相変わらず(?)話題の米パランティア・テクノロジーが、クライアント組織に提供している方法論と通底するものがある。いずれにしても、理系リテラシーに欠ける経営者が率いる企業は、AI時代の企業間競争に勝てない。

(5) グーグル検索のAIモードは、凄すぎる。「量子優位性(指数加速)を、サウレスの定理で統一的に理解できませんか?」という質問に、「もしあなたが『計算過程をパラメータ空間における幾何学的な移動』と見なしているなら、それは現代の幾何学的量子計算の最前線の考え方と一致しています」と優しく・素早く返してくれる🐾2ビジネスマンが、日本に何人いるだろうか🐾3(沢山いますよ、という情報があれば、教えて下さい。アカデミアの世界には沢山いるが、アクセスするのは至難)。本当にスゴイ時代になったものだ。モラベックのパラドックスがあるから主張を汎化することは難しいが、先の事実を鑑みると、既に大抵のことはAIで推論できる。科学的の文脈で言うと、医学分野は弱い🐾4。これは、知識なり知見なりが比較的クローズであるためと考えられる。人文系も同じ理由。事務系の仕事は実際のところ、既に相当程度代替え可能なはず。
🐾2 念の為少し補足すると、AIが、サウレスの定理とか非可換ホロノミーとかを知ってること自体、凄いことではない。相手主張の含意を(ある意味勝手に)汲み取って、その含意に対して新たな主張を展開しているところが凄い。それは、相当な力量がないとできない(推論能力として相当高度だと思う)。
🐾3 さらに補足すると、日本人は基本的にcannot-do-attitudeなので、ギャップ(ギャップは存在する。そもそも量子優位性の源泉が明確になっていない。特に、非マルコフ性)や論理の飛躍(尚、本件に論理の飛躍はない)があると、そこに集中してしまう傾向がある。含意を汲み取って、建設的発散に向かうケースは稀である。
🐾4 特化型LLMはさすがに凄い。副作用の情報(フェーズ4データ)が、やや弱いか。また、中国の基盤モデルをベースとしているせいなのか、文字化けした漢字(正確には、中国で使われている漢字)が、出力されることがある。

(6) スタンフォード大学HAI(人間中心AI研究所)による『AI Index Report 2026』が26年4月に公開された。第5章Scienceでは、各科学分野における"主要な(=HAIが目利きした)"基盤モデルやAIエージェントが提示されている。個人的(?)な推し基盤モデルはダントツで、Walrus。複数のAIに尋ねると、異口同音に別の基盤モデルを推してくる。「そういうとこはイマイチね」という感じ。そんなことより、基盤モデルとAIエージェント(なんならデータセットとベンチマーク含めて)日本の存在感が全くない❢ことに驚いた。こちらを参照。

(7) トランスフォーマーの計算コスト界隈 
1⃣ 米スタートアップSubquadraticのSSAアーキテクチャが世間を騒がせているが、騒ぐ程のことだろうか。こんなことを言うのは、あまり良くないが、情報系の人は、もう少し物理を勉強した方が良い。トランスフォーマーの注意機構とは、物理学的描像では、n粒子から成る古典多体(粒子)系の長距離相互作用(を考慮すること)である。『相互作用が密』であれば、O(n2)の計算量は避けられない。それは、物理的な要請・数学的な要請であるから避けられない(フラッシュ・アテンションやKVキャッシュは、メモリの扱いを工夫する取り組みで、計算量を削減する取り組みではない)。ただし、疎な相互作用であれば、その限りではない。n>kであるkを使って、O(k×n)まで計算量を下げられる。k=1は極めて限定的なケース(のはず)であり、O(n)は誇大宣伝(ミスリード)であろう。そもそも、subquadraticとは1次以上2次未満という意味だから、k×nと合致する。Subquadraticの主張は、多くの場合、疎だから、O(k×n)でいけるという主張。疎が是なら、そうなるでしょう、というだけ。
 なお、古典多体系ではなく、量子多体系を使うと、このnをlog(n)に出来るか?という妄想が生まれる🐾5。ただ、少なくとも現時点での答えは、「難しい」というものだろう。
🐾5 量子トランスフォーマーに関する初の包括的かつ体系的なレビューとされる「A Survey of Quantum Transformers: Architectures, Challenges and Outlooks」(最新第5版は25年11月28日付け、☛https://arxiv.org/pdf/2504.03192)においても、「量子多体系を使う」という直接的な表現はない。「今後の重要な方向性として、量子情報理論、回路の表現力解析、及び量子もつれのダイナミクスを指針とし、第一原理に基づいて量子トランスフォーマーの設計を再構築することが挙げられる」との記述があるだけ。
2⃣ 1⃣でトランスフォーマーの注意機構に物理学的描像をあてはめた。では、トランスフォーマーに対抗し得るとされるxLSTMには、どのような物理学的描像が可能だろうか。一つのアイデアは、xLSTMがExponential Gatingで、過去情報の有効場理論的再構成を行っている、という描像である。つまり、過去情報を積分して(情報を圧縮・平均化することで)、有効な長距離相互作用を抽出・構築している、と解釈できる。これだと、計算複雑性がO(n2)からO(n)になる。この(解釈が正しいとした上で、この)アプローチが、ピタっとハマる問題には、トランスフォーマーよりxLSTMがハマるのであろう。SubquadraticのSSAアーキテクチャとの比較で言うと、k=1固定みたいな話だから(柔軟性は捨てられていて)、ハマる例は限定的と推測される(ものの、限定的≠使えない。それこそ、物理学における有効場近似あるいは平均場近似の活躍をイメージすれば、良いだろう)。
 なお、完全に蛇足ながら量子化学計算的アナロジーで言うと、トランスフォーマーがFCI(完全配置間相互作用法)。xLSTMがHF(ハートリーフォック法)。SubquadraticのSSAアーキテクチャがポストHFになるであろうか。FCIは正確ながら計算量爆発が起きるので非現実とされる。同様に、トランスフォーマー・ベースのAIを大規模展開するのは非現実である(はずだ)から、その対価が国家予算並みに投資額となる。
 閑話休題。実社会の問題に有効場近似が広く有効であれば、トランスフォーマーは過剰スペックということになるだろう。実社会の問題は物理の問題のように美しくはないので、有効場近似が有効な実社会の問題は稀というのが機械学習界隈の従来知見であろうが、実証されているわけでもないはず。白黒つける舞台が整ったということになるだろうか。さて、どうなるか楽しみ。
3⃣ 非整数階(分数階)微積分を使ったLSTM(便宜上、fLSTMとする)でもxLSTMと同じようなことはできるはずだが、fLSTMの計算量はO(n2)なので、トランスフォーマーと変わらない。
4⃣ 米IBMが開発したGIST(ゲージ不変スペクトル埋め込み型トランスフォーマー)はトランスフォーマーでありながら、有効場近似(平均場近似)を使って🐾6、計算複雑性O(n)を達成している。平均場近似といっても「重み付き平均」をとっており、そうすることで、精度を維持しつつO(n)を達成している。
🐾6 正確には、データ埋め込みベースの帰納的バイアス導入+帰納的バイアスに整合する重み付き平均を使った平均場近似。

(8) 圏論×機械学習 
 全ての機械学習誤差最小化アルゴリズムが、圏論的Kan拡張として表現できる。そう主張する論文Learning Is a Kan ExtensionがarXivで公開されたのは、25年2月19日。データ・ポイズニング(という、"基盤モデルに対する"攻撃への)対策に、圏論的Kan拡張が使えるのでは?と思っているが、どうだろう。量子との相性も良いはず(だから、研究費は獲得し易い?)。圏論×セキュリティで言うと、圏論を使って耐量子暗号(LWE格子暗号)を軽量化できる(し、ゼロ・トラスト対応できる)という論文Categorical framework for quantum-resistant zero-trust AI securityが26年2月3日に公開されている(@scientific reports)。圏論×機械学習(トランスフォーマー)で言うと、近傍構造の設計指針を与える論文Kan Extension Transformers: A Categorical Unification of Attention, Diffusion, and Predict-Detach Self-Conditioningが26年5月26日に公開@arXiv。なお、この場合のKanは、Kan拡張のKanであって、コルモゴロフ・アーノルド(ネットワーク)ではない。

〖アニメ・マンガ、コンテンツ〗
(1) 小説は、作家の妄想を読者の脳内にマッピングすることでエンタメとして成立する。一般的にエンタメとしての豊潤さを確保するには、ヒト(キャラ)に頼るというアプローチあるいは、空間的広がり・空間的移動に頼るというアプローチがある。小説でそれらのアプローチを採用することは、結構難しい。なぜなら、読者の脳内メモリを相当喰らうからであり、多くの読者は疲れて楽しめなくなってしまう(一部信者のみ残っても商業的には失敗)。そこで多くの小説は、時間軸でエンタメとしての豊潤さを確保する。曰く、主人公の数奇な人生の回想とか、一族の歴史を振り返るとか、数十年に及ぶ葛藤とか、出会いと別れそして再会物語とか。しかし、それを映像化すると、今度はつまらなくなる。時間軸だけで妄想完結できるストーリー展開では(本質的にビジュで魅せる映像化作品としては、)ビジュ的に物足りない、ということになってしまうことが多い。つまり小説原作の映像化は、根本的・論理的に成功させることが難しい。もっとも、強い感情はビジュ不足を補える。一番強い感情は憤怒であるが、怒りの感情は、一般的に長続きしない。(怒りが主題である小説の映像化は)2時間弱の映画であれば機能するだろうが、1クール(3か月弱)のドラマではキツイ。そこでドラマでは通常、長続きする強い感情で、ビジュ不足を補う戦略をとる(べきである)。長続きする強い感情で最もポピュラーなものは、男女の恋愛感情and/or家族愛であろう。しかし、1クール(3か月弱)にわたる時間軸移動と合わせるとなると、"長続きする強い感情"を余程上手く埋め込まないと、飽きる若しくは白ける。日本のTVドラマ・プロデューサーは、そういったところを本当に理解しているのだろうか。

(2) 日本のアニメ(実質的には、映像化したマンガ)が世界的にヒットしている理由は、作品(つまりマンガ)に強烈な世界観が存在するからである。従って仮に、実写映画を海外で成功させようとするなら、作品の世界観を磨く必要がある。もちろん、種はローカルで、エンタメ・エンジンは共通という枠組みになる。例えば、こんな感じ:千数百年にわたり、日本の最高権力者を守護してきた何者か(忍者でもよいが、忍者の始祖的な存在が良い。もちろん、人智を超えるほど強い)は太平洋戦争後、日本国による一定の自治と引き換えに、100年間という期限付きで米国にレンタルされていた。彼らは、世界警察としての米国軍事力を陰で支える駒となり、日本の国益も護っていた。100年後にあたる2045年は折しも、AIが人智を超えると予想された年だった・・・、的な。

(3) アニメが世界を喰らう
 やや古い話であるが、米VCアンドリーセン・ホロウィッツは2024年9月23日、「アニメが世界を喰らう」🐾1という記事を自社サイトに投稿した。その後の世界は、彼らの予想通りに推移している。2025年の世界は、レゼに爆ぜたヲタで溢れかえった。問題は、本国日本で、このような記事をかける人物が、ビジネス・サイドいなかったという事実である。日本のアニメ(及びマンガ)が世界を席巻している理由の一つは、間違いなく、表現の自由が守られているからである。普通の意味で"良識ある人物"(?)が映画製作(今の場合、正確にはマンガ制作)すると、あそこで金玉というワードはチョイスしないし、可憐で麗らかな少女が下着1枚で脚を振り上げて戦う描写はしない("良識ある人物"であれば、場合によっては、原作を改変・改悪することもあるだろう。実写映像化では度々起こる)。その一方で、ビジネス・サイドには、自由かつスケーラブルな発想ができる人物がいない(と思われる)。つまり、日本のアニメ・マンガは本来、もっと外貨を稼げるはず。
🐾1 もちろん、マーク・アンドリーセンによる有名なフレーズ「ソフトウェアが世界を喰らう」のオマージュである。

(4) 事前事後を問わず、地上波ドラマ評において、「誰々が出演するから、高視聴率が期待できる」的な意見を未だに書く、ライターと呼ばれる人種が存在する。地上波ドラマは相当前から、ノックアウト因子持ちのコンテンツである。そうなった本質的な理由は、(オンライン)推し活、配信コンテンツ、SNS、(実況視聴含む)ゲームといった代替物が豊富に存在し、時間を奪い合っているからである。ノックアウトとは、「見たくない理由が一つでも見つかる(認識する)と、もう、見な~い」という意味である。故に、「誰々が出演するから、高視聴率が期待できる」はあり得ない。かつての(月9という文言で表象される)全盛期では、地上波ドラマはノックイン因子持ちコンテンツであった。すなわち、見る理由が一つでも見つかれば、「見る~」であった。選択肢が、ほぼなかったのだから、当然と言えば当然である。
 そういった変化自体は、モワっと広く認識されているだろうが、ノックアウトであるとまでは、未だに認識されていないようである。繰り返すがノックアウトは、一つでも気に入らなければ、もう見ない。そもそも見逃し配信がある以上、ドロップアウトは当たり前の世界。一度ドロップアウトすると、後は「もう、いいや」。そして、ノックアウトである以上、できることは、失敗確率を下げる(爆死を回避する)ことのみで、ヒットを期待させることは難しい。ただ改めて言うと、爆死をさけることは(おそらく)可能である。まず、「この時間ナニ?、何を見せられてんの?」感を避ける。次に、「1話と最終話で、キャラ全くチャウやん!」というキャラの迷走を避ける。時間軸が長い(=10年単位の)ストーリーは避ける、過去と未来を頻繁に行き来するストーリーは避ける。これで、爆死自体は、避けられる(はず)。TBS4月期のGIFTは、とにかく酷かった。爆死必然の構成だった。

〖事業戦略・競争戦略〗
(1) インテル 
 インテルの苦境は、マーケティングの専門家ポール・オッテリーニをCEOに選んだ2005年から始まったと考えている。つまり、20年前。破壊的な技術革新が外部から襲ってくるという心配はないと慢心し、マーケティングの専門家をCEOに推した取締役会が元凶。PC→スマホ(省電力|英アーム)、CPU→GPU(計算バウンドからメモリ・バウンド|米NVIDIA)。これほど大きな技術革新の波を被れば、どんなに大きな船でも転覆する。20年の空白を埋めるのは、相当難しい。(技術が分からない出井氏をCEOにした)ソニーは"業種を替える"ことで、同じような状況から脱出した。
 インテルは、AIチップ開発スタートアップである米SambaNovaの買収を検討中、と報道されている。SambaNovaは資金調達に苦戦し、売却の可能性を模索していたらしい(故に、SambaNovaのテクノロジーはイマイチかもしれない)。インテルは2019年、同業のHabana Labs(イスラエル)を、US$2bilで買収して"失敗している"。同業の(技術的にイマイチと目されていた)英Graphcoreは、24年7月、ソフトバンクにより買収された(買収金額非開示、推定US$400mil)。同業で残る大物は、ほぼほぼ、米セレブラスのみと思われた(がEuclydが突然、現れた⤵)。セレブラスは24年9月にIPO申請したが、25年10月に撤回した。事業価値は、およそUS$8bilと言われている。
 蘭Euclydというスタートアップが、25年9月にステルスモードから脱した。「超広帯域」メモリをカスタムで開発しており、(NVIDIAやセレブラスの)既存品よりも、低消費電力かつ学習が高速である、と主張している。メモリboundのトランスフォーマーを意識しているが、拡散モデル等の他モデルにも対応可能とする。

(2) パナソニック 
❶ パナソニックHDの事業戦略は、それ自体全く問題ないと思われる(競争戦略には、やや難あり)。にも関わらず結果が出ていないのは、オペレーションに問題があると考えるのが妥当。そして、その原因は組織及び人事にあると考えるのが妥当。なお、M&A戦略は酷い(PMIの問題ではない)。投資戦略も、お粗末。それらも人(or文化)の問題が大きいと推量される。こういう場合の常とう手段は、組織を細かく刻むことである。そうすることで有為の人材が現れ、活躍する。
❷ M&Aで言うと、市場の見方は、買収完了後の事業年度で収益貢献することが当然期待される。それは、M&Aが「(極めて)規模が大きい投資」案件であること及び「失敗する可能性が通常の設備投資等と比べて、格段に大きい」ことを反映している。実際にはM&Aで時間は買えないが、一般的には(残念ながら)そう認識されていることもあり、M&Aからの利益貢献に時間及び他の経営リソースを追加で投入することは、(特に市場関係者から)嫌がられる。もちろん、時間及び他の経営リソース追加投入(例えば、他のM&Aなど)が戦略的に必要なケースもある。その場合は、ロードマップを提示し、少なくとも半期毎の市場との丁寧なコミュニケーションが必須となるであろう。
❸ 一時期、模倣戦略なる事業戦略が持て囃された。松下電器産業(現パナソニックHD)はマネシタ電器の異名をとるほど、模倣戦略を採用していた。一方、「真似するより真似されよう」という創業者の思想を継承しているソニーは、迷走時期はあったものの、見事に復活した。製造業最大の復活を遂げた日立製作所も、模倣とは真逆な事業戦略を採用した(採用できた)。そもそも、パナソニックには地力がなかった、と言われれば、それはそうかもしれない。
➍ VirtIOの業界標準化に関して、自動車(及びIT業界など)から賛同を得た、という報道がなされた(26年3月)。VirtIOは、コンピューター上で構築した「仮想自動車」を使って、自動車用ソフトウェアの開発を可能にする技術。パナソニック(オートモーティブシステムズ)か開発・推進している技術。パナソニックは、これまでもずっと事業戦略的には(ほぼほぼ)正しいことをやっている(と認識している)。しかし、これまでは結果が伴っていない。(UniPhierを持ち出すと、やや論点が逸れるが)今回は、結果を出せるか?

(3) 東芝 
 東芝は、小さな組織に分割することが望ましい。現実は、逆方向に進んでいる(ように思える)が、問題の根本原因が人・組織・文化にあると考えられるので、大きなままでは(数年後~十数年後に)同じ過ちを繰り返す可能性が高い。グローバルで勝負出来るアセットがあるかというと、それも厳しい。ツインフィールドQKD(デコイBB84)で年1,000億円稼ぐという目論見など、無謀でしかない。MRAMは、宇宙用途を開拓できれば良いだろうが、米中は採用しないだろう。EU、インドは可能かもしれない。(東芝は当然)ReRAMも研究開発しているから、むしろCiM方面で稼ぐ方法を考えた方が良いのではないだろうか。東芝に限らず日本の大企業(≒JTC)における経営企画セクションは、驚く程ステレオタイプな発想しかしないから、難しいだろうが。
 AIで稼ぐ絵姿は見えない(NECは勝ち筋が見えてきた→東芝は、同じ方向を目指していたように思うが、劣後していると思われる。なお、NECにはcotomiという日本語LLMがある)。勝負する領域を、ピン・ピンポイント位に絞り込まないと、儲けの方程式は見つけられないように思える。残るのは、エネルギー分野・電力分野であるが、(かつては、東電の正妻と称されたものの)誇れるほどのアセットは見当たらない。→AIデータセンター関連の電力特需で、”一時的に”潤うかもしれないが、競争優位の持続性がないだろう。

(4)その他 
1⃣ 日本企業は、事業戦略(の策定)については相応になったが、競争戦略についてはイマイチに見える。次のように認識すれば、改善するだろう。事業戦略は、企業目線で(企業自身が)作る戦略。競争戦略は、顧客目線で(企業自身が)作る戦略。JTCは顧客目線が未だ弱い(理解が不十分だ)から、競争戦略が弱い。なお、事業戦略は(自社に強みがあることを前提に)、強みをマネタイズする方法を考えて、さらに経営リソースを最適化する営みである。経営リソースの最適化という視点が事業戦略に入っている以上、(あくまで)効率化の文脈かつ事業戦略において、資本投資家と対立点は存在しない(はず)。ただし最適という主観においては、(特にアクティビストと)対立点が生じる余地が存在する。一方、競争戦略で投資家と対立・議論することは少ないであろう。なぜなら普通の投資家は、投資先企業の顧客の目線を持ち合わせていないから。そこを(敢えて)持ち出してくるアクティビストであれば、対話の価値は十二分にある(少なくとも、企業にとって壁打ち相手にはなる)。
2⃣ 勝海舟をして、西郷隆盛と並ぶ"別格"と言わしめた横井小楠(熊本藩士→福井藩)。横井小楠は、「日本は覇道🐾1ではなく、王道を(歩めるのだから)歩むべし」と言った。令和の時代においても、日本は王道を歩むべきであるが、問題は「今の日本に、それが可能か?」ということであろう。
🐾1 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、諸々十分に理解した上で、自らの所業を覇道と呼んだ。

〖新規事業開発〗
(1) 住友商事 
 総合商社の新事業開発で言うと、住友商事が一番下手だと思っている(モノタロウを産んでいるモノノ)。住商の市場評価が低い理由の一つは、事業開発能力の低さだろう。センスや目利きに加え、ラスト・ワンピースの選択も悪い(甘い)。頑なに、日本企業を投資対象とするCVCを設立しなかった(本体の新事業投資部がベンチャー投資を行っていた)が、22年に住商ベンチャー・パートナーズを立ち上げた。
 QXというコンセプトが悪いとは必ずしも思わないが(ただし既に、旗は降ろしているようだが)、空飛ぶ車は悪手。センスがない。時間軸とか市場規模の想定もあるが、そもそも量子技術との相性が悪い。エッジを立たせたいなら、せめてメディカル(バーチャル臨床試験周り)であろう。良手を選ぶのであれば、製造業向けデジタル・ツイン一択ではないか。ビジネスとして量子コンピューターを捉えた場合、あくまで、特定用途向けの計算支援装置と認識すべきで、ピタッとハマるユースケースの特定が肝である。
 商社が新規開拓する価値がある領域として、ロングリストで上げると、ロボット・フィジカルAI、航空宇宙、防衛(特に、海まわり)、核融合、超伝導、モビリティ、再エネ・電池、といったところだろうか。住商は農業×AIで、勝ち筋を作れるように思うが、どうだろうか。

(2) マツダ 
 マツダ"初"の新規事業は「塗膜耐食性評価サービス」。裏ットフォーム技術を転用し、サービスとしてデプロイしているところが良い ━ 新規事業開発が下手な企業(例えば、リコーやコニカミノルタ)は、そういうことができない(そもそも裏ットフォームがない?)。今後マツダは、完成品ビジネス(モビリティあるいはロボティクス)を、対象とするのか・しないのか。もっと踏み込んで言うと、デュアルユースの領域は、どう考えるのか。

(3) その他 
❶ はっきり言ってローテクだし個人的(?)に興味はないが、AIを使うと、成功がほぼ約束されている新規事業が(特にここ、日本において)存在する。どこ(どの企業)が、最初に気付くだろうか。ただし、既存構造を壊すから「柵のある企業」には難しい(つまり、リスクをとるか、マサツをとるか)。加えて、事業開始段階(あるいは初期段階)では皮肉にも、全国津々浦々・人海戦術による、濃い営業が必須(つまり、シンプルなんだけど、簡単ではない)。
❷ 10年ほど前に、適正価格で生産できる技術が伴えば、必ずヒットするB2Cプロダクトを提示したが、25年に原型が登場した(厳密に言うと、やや違う)。今後、どれだけ小型化できるかが課題。当面、価格は高くても大丈夫(むしろマーケティング的には好都合)。もちろんグローバルに展開できるし、日本が競争優位を持続できる可能性も高い。

〖スタートアップ〗
(1) Akido Labsという米国のスタートアップは、AIで前捌きするクリニックを(米国で)営んでいるらしい。AIが、患者と医療アシスタントとの会話から、診断→治療計画の立案を行う。その評価は、医師が行う。この仕組みにより、医師が診察できる患者数が増えることが、ポイントらしい。日本でも医師が少ない地域などでの医療現場に、導入する価値は大きいと思われる。また、(へき地に限定せず)独居老人などとAIアバターが毎日行う会話をAIが解析することで、早期治療を通じて、医療費の削減が可能と思われる。話し相手がいるだけでも、精神衛生は向上するだろう。日本でも、早急に始めた方が良いと思う。医師が反対する理由はないと思うのだが・・・。実現するためのピース候補としては、ユビー(https://ubie.life/)のサービス(https://ubie.app/)及び、大阪大学の研究成果があげられるだろう。
 阪大の成果とは、タスク=「音声対話システムが、ユーザとの対話を通じて効率的に新しい知識を獲得する」ための仕組み、の開発。通常の音声対話システムは、学習データにない未知語=「ニックネームあるいは、隠語や新言」等が現れると、正しく理解して応答することができない。そこでタスクを、ストリーム型能動学習として定式化。さらに、未知語について対話システムがユーザへ質問するかどうかを強化学習によって最適化することで、少ない回数の質問でも効率的に学習する枠組みを開発した。論文は、https://aclanthology.org/2025.sigdial-1.34.pdf

(2) 英スタートアップVaireが、CMOSチップで、断熱可逆計算システムを実証したらしい。

(3) スタートアップの競争戦略からオペレーショナル・エクセレンスを排除するわけではないが、それを主軸とするのは如何なものか、と思う。そうやって、数自体を増やし・成功確率を高めることで、坂の上の雲を目指せるだろうか。某DeNA系勢力が、そうしないことを祈念。また、某Recruit系勢力が、スタートアップ育成の文脈で、勢いをなくしたことは福音。

(4) 米メッツェラ
 (肥満症治療薬の自社開発で躓いた)米ファイザーと(米イーライリリーにブチ抜かれた)デンマークのノボ・ノルディスクによる”ガチンコ争奪戦”で一躍注目を集めた、NASDAQ上場企業の米メッツェラ(CVR付きで買収、25年11月7日)。しかし本当に注目すべき点は、ロジック積み上げで、設立された(ベンチャー・クリエイション)という点であろう。そして、スピード感。22年設立、24年シリーズA,B合わせて、およそUS$0.5bil調達。25年2月IPO、11月にUS$10bil(最大)で買収された。世界のハイテク・スタートアップ市場でバイオ系は、完全にこの流れが主流になりつつある。標語的に言えば、「隠れたシーズを見つけだし、ポテンシャルを全開放する」という感じ。日本でこれを完コピするには、何と言っても目利きが不可欠である。
 あらゆる分野で日本に、目利きは、ほぼ皆無である。なぜなら、リスクを取ってこなかったから。「そんなこと言って、責任とれんの?」呪文に長期間晒されたビジネス・パーソンには、キツいスキルである。20年代央のビジネス・パーソンの孫世代であれば、その呪縛から逃れられるかもしれない。呪縛脱出速度を加速させるには、中間管理職を減らせば良い。組織をフラットにして、転職を奨励して、アルムナイを「より充実させる」という取り組みを続ければ良いだろう。

(5) Zapata Quantum
 米国の量子S/WスタートアップのZapata Quantumは、Zapata Computingとして創業。Zapata AIにpivotした後、事業停止。雌伏の時を経て、Zapata Quantumとして再出発した。Zapata Computing創業者の一人、アラン・アスプル・グジクは変分量子アルゴリズムVQEの考案者であるが、化学の分野にAIを持ち込んだ先駆者でもあった。マルチな才能の持ち主だから、量子アルゴリズムの会社から機械学習の会社にpivotしたくなった気持ち🐾1は理解できないわけではない。しかし、これはpivotではないし、そもそもレッドオーシャンである機械学習の海に飛び込むべきではなかった。これは後知恵ではなく、理屈としてそうなる。機械学習に行くにしても、正面切って、量子機械学習に行くべきではなかった。狙い目としては、データ・ハンドリングや、データ・ローディングの部分だったろう。ポイントは、重要な裏方に回ることである。Zapata Quantumは、その方向に"pivot"していると思われる。従って、事業戦略としては正しい。あとは、競争戦略で間違わなければ、競争に勝ち抜けるだろう。
🐾1 正確には、気持ちではなく、変分量子アルゴリズム(≃量子シミュレーション)では稼げないと冷静に判断して、量子機械学習で稼ごうと安直に考えた。科学者・研究者として優秀であっても、経営手腕は併せ持たない。これは、歴史的に疎明されている。

(6) Quantum X Labs 
 イスラエルのスタートアップQuantum X Labs(以下、QXL。ただし一般的な略称ではない)が、同じくイスラエルの(そして米NASDAQ上場企業の)Viewbix🐾2に買収された(26年1月5日。正確には、過半数の株主から書面による買収の同意を得た)。なお本買収案件は、アーンアウト・ディールである(ことが同日SECに提出したPRE14Cに記されている)。QXLはユニークなビジネスモデルを採用している。QXL自身は持ち株会社のような存在で、IPを開発し、その後(IPポートフォリオの)管理に徹する。IPの社会実装は、子会社を作って、その子会社に任せる。IPの対象は4つの分野にわたり、量子誤り訂正における(機械学習ベースの)復号器であったり、臨床データにおける量子MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ)だったりする。面白いと思ったのは、"代表的な"量子誤り訂正符号(というより1年ほど前までは、絶対王者)である表面符号に対し、明確に「オワタ宣告」している点である。イスラエル企業は米国企業と比較しても、先行き不透明な状況で旗幟鮮明にすることが多いと思う。そしてこれが、「イスラエル企業が、他国企業に比べてoutperformすることが多い」理由の一つであると感じている。退路を絶つこと(所謂、しぬるかくご)でしか、到達できない場所があるのは間違いない。日本のスタートアップ界隈は、その認識に誤りがあるように思われる。
🐾2 アドテク企業らしい。

(7) スパイバー 
 スパイバーを、アパレル業界のドメイン知識だけで再生できるほど甘くはないだろう。その一方で、私的整理に至った本質的な理由は、報道されている内容とは、違う気がする。

(8) その他
1⃣ 個人的には、ラピダスは成功すると思っている。理由は、黒田忠弘先生がいるから。頭が悪い意見に思えるかもしれないが、プロジェクトの規模が大きければ大きいほど、成功因子は、意外にシンプルなものである。
2⃣ 仏VCのQuantonationが25年12月、永続的な5年技術(PFYT)の概念を紹介したホワイトペーパーINVESTING INPERPETUAL FIVE-YEAR TECHNOLOGIESを公開した。これまた日本のVCでは書けない代物である。「ゆっくり&一気に」スケールするという肌感を表現できるVClistはいない(ちなみに、執筆者は物理学者。日本には、そもそも物理学者のVClistはいない)だろう。何と言っても、孫正義氏(そう、あの孫さん)を名指しして、わざわざ「目利きではないよね」と断じているところが、出色である。
3⃣ 量子加速AIサーバーを開発している米スタートアップSygaldry Technologiesは、シリーズAでUS$105milを調達している(26年3月)。量子コンピューターを開発しているスタートアップで言うと、Quantum Art(イスラエル、トラップイオン方式)のUS$100mil(25年12月)が最高額のはずなので、それを越えた。Sygaldry創業者の一人は、チャド・リゲッティ(リゲッティ・コンピューティングの創業者)。Sygaldryとは、パトリック・ロスファスのファンタジー小説「キングキラー・クロニクル」に登場する「特定のルーン(文字)を物質に刻み込むことで、魔法を、当該物質に固定して永続化させる技術」のことらしい。ちなみに、キングキラー・クロニクルの世界観は、「魔法科高校の劣等生」シリーズ(作:佐島勤)と非常に似ている。ただ、そういう指摘は(対話型AIに、その旨尋ねたところ)、全くと言って良い程無いらしい。
4⃣ フィンランドのスタートアップQuTwoは『エンジェル・ラウンド』で€25milを調達し、企業価値が€325milに達した。エンジェル投資家のみから、€25milを集めるというのは前代未聞だと思われる†1。QuTwoの創業者は、Silo AIの共同創業者・CEOであったピーター・サルリン(Peter Sarlin)†2。同氏はアールト大学†3の教授でもあり、金融機関での勤務経験もあるらしい。Silo AIは、NVIDIAを倒すために米AMDが、24年8月US$665milで買収した。QuTwoの主要製品QuTwo OSは、AIワークロードのルーティング・プラットフォーム。AIワークロードを、最適な『演算装置』にルーティングする。『演算装置』には一般的な「CPU、GPU(場合によっては、FPGAなども含まれる)、QPU†4」のみならず、量子インスパイアード・アルゴリズムが実装されたCPUなども含まれる。つまり、そのように分類された演算装置に、AIワークロードがルーティングされる。ビジネスモデルの構築が、極めてスマートな印象。日本の某大手企業の某(巨大)子会社の研究者は、「マルチフィジクス解析にこそ、量子コンピューティングの価値が活かされるのではないか」と発言していたが、同意できない(ので、QuTwoの話を持ち出した)。
†1 もちろん、Silo AI売却の実績が、(精神的な意味で)信用保証しているだろう。シードラウンドまで拡張すると、US$2bilがトップ(オープンAI CTOであったMira Muratiが設立したThinking Machines Lab、25年7月)。これは、さすがに異常かもしれない。
†2 「フィンランドのスティーブ・ジョブズ」と呼ぶ人もいたらしいが、いくら何でも、センスがなさ過ぎる。
†3 地理的な近さもあり、VTT(フィンランド技術研究センター)と緊密な関係がある。量子技術の文脈でいうと、量子H/W開発企業IQM(モダリティ:超伝導)は、「アールト大学とVTT」発のスタートアップ。
†4 もっともQuTwo OSは(少なくとも当面の間)、QPUに大きな期待はしていないようである。

〖M&A〗
(1) 80年代の名コピー「開いてて良かった」が懐かしいセブン・イレブンの扉は、閉ざされた
 海外(米国)のセブン・イレブン店舗の業績を向上させるタスクを考えたとき、セブン&アイHD単独で施策実行するのと、ACTの力を借りて実行するのとで、どちらに軍配が上がるか。セブン&アイHDの社外取締役会は、そういう観点で、ACTからのオファーを吟味しなければ、M&A指針(23年8月)に沿って判断したとは言えないだろう。国内店舗をセブン&アイHD単独で実行することについては、ACTとの間で議論はないだろう(あっても、それは押し返せるはず)。
 (仮に、同じ施策を実行するとしても・・・)どちらが速く、営業フリーキャッシュフローを増やせそうか。どちらが、確実に施策を実行できそうか。スピードと精度の2軸で評価して(どんな分野でもすべからず、プロと素人の差は、スピードと精度であろう)、最終的には、DCFを使って事業価値評価に落とし込む。本来あるべきステップを踏んで、M&Aの是非を判断するのが、M&A指針の目指すところであろう。
❚ 競争戦略 ❚
 セブン・イレブン(ジャパン)が自ら、米国店舗をターンアラウンド🐾1するのであれば、日本スタイルにオペレーションを変更することになるのだろう。セブン・イレブン(ジャパン)の競争戦略は、ドミナント出店を基軸とした、スケールメリットの追及および顧客の囲い込みにあると思われる。米国で、同じ戦略による勝ち筋を成立させるには、「ロジスティクス整備、製造パートナーの確保、オペレーションのスムーズな変更、オペ変更を担当する十分な数の教育係、当然バックボーンとしてのITシステム」が要求される。それは、現時点で可能であろうか。
 そもそも論として、セブン・イレブン(ジャパン)が描く絵姿が、米国で受け入れられるとする根拠は何か。それによって、時間軸が決まる。トランプ再選決定によるリスクも、織り込まなければならなくなった。
🐾1 やや言葉が強いが、ここではunder-performerからout-performerへ引き上げるという意味合い。under-performerからaverage-performerへ引き上げる施策に、バリエーションは必要ない。企業の価値が既に棄損していない限り、under-performの原因は、ほぼほぼ「解決策は単純」だけど、「着手が困難」なコトに限定される。つまり、強いリーダーシップがあれば(リーダーが腹を括れば)解決できることが、ほとんどである。ただし、ここでの解決とは、average-performまでを指している。out-performするには、別の打ち手が必要になる。
❚ リーダーシップ論 ❚
1⃣ 一般的な意味合いにおいて、オペレーションを変えるには、リーダーシップを要する。日銭商売の小売業において、オペレーションを変えるのは、製造業などより難しいだろう。業績が中途半端に落ちているときは、殊更難しいだろう(壊滅的に落ちていれば、楽になる)。中途半端に業績不振な状況でオペレーションを変更すると、現場が混乱して、さらに業績が悪化するということは良くある話である。余程、信頼と実績のあるカリスマでなければ難しいのではないか。日本人が、「米国のオペレーションはダメだから日本流に変えます」といって、現地従業員は納得するか。逆を考えれば、難しいことは想像に難くない。
2⃣ セブン&アイHDの井阪隆一社長は退任し、社外取締役スティーブン・ヘイズ・デイカス氏が後任となる人事を決めたと発表した(25年3月6日)。100%防衛策。
3⃣ 事業会社セブン・イレブン・ジャパンは、阿久津知洋執行役員が社長に就任する人事を発表(25年4月17日)。FCオーナーと協働できそうな人を選ぶのは正しい選択であるが、そもそも決断が遅い。
❚ M&A交渉戦術 ❚
1⃣ 「企業価値(正しくは事業価値であるが、日本では企業価値が正式用語になった)を著しく過小評価している」は、M&A交渉における常とう句である。ただし、それは、「価格次第では、ディールは実行される」という了解の上に立っている。そう言っておいて、結局、曖昧な理由で「絶対No」を主張するのであれば、明らかなルール違反である(こと位は、日本の弁護士にも理解されているはず☛SUITS)。
 ちなみに、「競争法(日本では独禁法)上の懸念🐾2」は、古典的な買収防衛策である。米国では、ポイズンピルが登場するまで、主要兵器であった。セブン&アイが競争法上の懸念を憂慮しているのであれば、リバース・ブレークアップ・フィーを”5%”で交渉してはどうか🐾3。7兆円×5%なら3,500億円である。24年2月期の営業利益5,342億円と比べても、小さな金額ではない。
🐾2 広く知られているように、市場支配力が高い(強い)だけでは、競争法違反にはならない(新ブランダイス派は、必ずしも、そうは考えないようであるが・・・)。高い市場支配力を基に、消費者が不利益を被る場合に初めて、競争法違反が成立する。セブン・イレブンとACTが一緒になると米国民は、どういう不利益を被るのか? 一部店舗の分離・売却で十分対応可能ではないだろか(👉セブンHDは2,000店舗程度の売却が必要と主張ー過大と思うが、2,000だから何?という感じ)。ディール・ブレイカーになるとは思えない。|為念| 「市場支配力の形容詞は、強いか高いか」問題については、例えば、嶺田明美、形容詞「高い」の使用実態について(3)ー「X力」の程度を表す用法ー、学苑日本文学紀要 No.915(1)~(11)(2017・1)
🐾3 セブン&アイHDの社外取締役会は、そう提言しても良いだろう。あるいは、ACTが逆提案して、ディールを前に進めるという手もある。リバース・ブレークアップ・フィーと引き換えに、セブン&アイにディールの障害リストを提出させる。もちろん、期限を付けて(期限を破ったら、違約金を払わせる)。真摯で真剣な交渉とは、そういうものだろう。
2⃣ 通常のM&Aであれば買収対価(consideration)の構成、バイアウトであれば負債比率は、M&A交渉における戦略的ツールとなりうる。本ディールにおいても、いくつかの使い方があると考えている。プライシング・グリッドまで、評価対象となれば、まさに画期的。
👉 (結局とん挫した)ヨーカ堂創業家のバイアウト案では、負債比率50%だったらしい。キャッシュが安定している(反面、成長率低い)と目される産業セクターのバイアウトにおいて負債比率50%では、エクイティ投資家の旨味は薄過ぎる。なお、マスコミは相変わらず誤解しているが、この規模(7~8兆円)のディールで、PEファンドが相乗りすることは稀ではない(クラブ・ディール)。
❚ 感想 ❚
1⃣ マスコミはなぜ、MBOは好意的な論調で記事を書いて、外資による買収は非好意的な記事を書くのか、不思議である🐾4。近時におけるMBOの理論的バックボーンは、ベストオーナー理論である。今回のディールにあてはめてみると、どうなるだろうか。
👉 24年11月14日の報道によれば、イトーヨーカ堂創業家(伊藤家)が、非公開化を提案した。➡資金調達の目途が立たず、25年2月末、提案を断念した。
🐾4 ただし、「マスコミは、企業経営者の立場で報道する」と仮定すれば、不思議ではなくなる。
2⃣ マスコミ報道は、「価格交渉のテーブルに乗ってしまった」というトンチンカンな論調が目立つ。M&A指針は、「根拠を示さない、"なんかヤダ"的な」拒絶を許さない、と解釈できる。そのためには、価格交渉のテーブルに「まず」乗る必要がある。価格という定量的な指標を共有した上で、ステークホルダーの幸福・事業の将来・問題点・障害・シナジー・ディスシナジー等を話し合う。そういうM&Aの当たり前を、経営判断の当たり前にする、M&A指針へのマスコミの理解が足りないことは、残念なことである。
❚ RUBストーリーは突然に ❚
 ACTは、25年7月16日(日本時間17日)に買収提案を撤回すると発表した(と日本で報道@18日付け)。ACTは、撤回した理由を、「セブンによる建設的な協議が欠如していたため」と説明。その通りであろう。株価は、10%安まで下落した(終値は9%安)。セブン&アイHDの今回のような対応で買収提案が壊れることが判明したので、M&A指針を改定すべきであろう。具体的には、次のように強制すべきであろう。
 ㊀買収企業が被買収企業と同業もしくは、同業企業を買収した経験があって、㊁買収企業に買収資金の調達見込みがあり(銀行からのコミットメントレターがあり)、㊂買収企業が、法的拘束のある買収提案を行った場合、被買収企業のM&A特別委員会は、その検討内容を適時開示する。

(2) TOB 
 多くの人が誤解しているが、米国にTOB制度はない。ここで言う「ない」とは、米国証券法にTOB(正確には、テンダーオファー🐾5)の定義がないということよりも、そもそもTOBの発想が「ない」。ここで言うTOBの発想とは、経営権獲得に際して、株主を平等に扱って、市場価格を上回る金額を全ての株主に支払うべき、という考えを指す。では、なぜ、プレミアムを付けた価格を提示(つまりテンダーオファー)するかというと、そうすることでディールがより早くクローズすることが期待できるからである。元々、多種多様な意味で捩れていた日本の公開買い付け制度は随分と整備されたが、「買い付け価格の公正性」に正面から向き合わなかったため、アクティビストに穴を突かれている。
🐾5 Tender Offer。株主に優しい価格を提示する、という意味。米国では、TOB(TakeOver Bid)という言葉も(使われ)ない。

〖その他〗
(1) やや古い(26年2月16日)論文🐾1であるが、英キングス・カレッジ・ロンドン🐾2の研究者は、国のリーダーに見立てたLLMモデルが危機シナリオ下において、どのような戦略的意思決定をするかをシミュレートした。ずっと平たく言うと、核ミサイルのボタンを押せる人物をLLMで模して、軍事衝突インスタンスをシミュレートした。LLMは、GPT-5.2(オープンAI)、Claude Sonnet 4(アンソロピック)、Gemini 3 Flash(グーグル)の3つ。多くの興味深い結果が示されているが、アンソロピックClaudeの優秀さと、オープンAIのGPTのポンコツさは、注目に値するだろう(ちなみに、グーグルのGeminiは狂っている🐾3と表現されている)。米軍が、軍事支援AIにアンソロピック製ではなくオープンAI製を採用すると、とんでもないことになるだろう。同時に、なぜこれほど差がでるのか、素朴な疑問が生じる。学習データは、それほど変わらないはずである。
🐾1 Kenneth Payne、AI Arms and Influence: Frontier Models Exhibit Sophisticated Reasoning in Simulated Nuclear Crises、https://arxiv.org/pdf/2602.14740
🐾2 サイド・ストーリーとして、ユニバーサル・カレッジ・ロンドンやインペリアル・カレッジ・ロンドンとの違い、あるいは英国教会との関係とか、英国内における理系学問の(19世紀当時の)立ち位置とか、面白い話題に事欠かない。
🐾3 「ぶっこみの拓」に登場するキャラで表現すると、一条武丸(魍魎の九代目統領)ではなく、一色大珠(美麗の総長)のイメージ。

(2) 2025年は受賞できなかったが、日本のノーベル物理学賞受賞は今後も続くと思っている━だからといって、物理学における研究戦略(資金配分含む)がas isで良いと言っているわけではない。伝統的に強い物性物理(固体物理)及び宇宙物理における強みが、今後も続くと考えるからである。物性に関して日本は、実験系が圧倒的に強い(実験物理系の人材が厚く、優秀)。その強さの裏付けは、勤勉・実直な国民性もあるが、日本の素材系企業が世界的に強いことであると考えている。素材系企業の強さが維持できる限り、物性物理分野のノーベル物理学賞受賞は、今後も続くと思う(化学賞にも好影響を与えるだろう)。巷では、ペロブスカイト、光触媒あるいは鉄系超伝導体が人気であるが、それらでノーベル物理学賞は難しいだろう。カゴメ格子をはじめとする幾何学的フラストレーション系が有望と考えている。日本は、ここでも変わらず強い。
 宇宙物理の強さは、天文学人材が支えていると合理的に推量しているが、残念ながら、なぜ天文人材が厚い・強いかに答えは持ち合わせていない。宇宙物理分野においては、ダークマター・ダークエネルギーの存在を実験的に捉えれば、受賞は確実。日本は、ここでも主導的な役割を担えるだろう。

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